アイザック・リーバーマン氏にとって「フラッシュクラッシュ」と呼ばれる相場急変は大チャンスだ。

  著しい相場急変が起きると、為替ディーラーの多くは立ち往生するものだが、リーバーマン氏は逆にその瞬間を捉えて利益を得ようと、軍事やテクノロジーの専門家らを集めてアストン・キャピタル・マネジメントを設立した。他社がブレーキを踏んで止まる時にギアを高速にする会社だ。

アイザック・リーバーマン氏
アイザック・リーバーマン氏
Photographer: Christopher Goodney/Bloomberg

  リーバーマン氏はニューヨークの高層ビル85階にあるアストンのオフィスでインタビューに応じ、「なかなか得難いデータを得られるフラッシュクラッシュ的イベントについては非常に興奮する」と語り、「そのような事態はシミュレーションできない」と述べた。

  1日当たり5兆1000億ドル(約565兆円)が取引される外国為替市場では近年、荒々しい値動きがよく見られるようになった。2014年設立のアストンは、電子取引で為替のマーケットメークを手掛ける企業として新規参入。超が付くほど激しい相場変動の中でも顧客に値を提示し、平常時に戻る際に利益を得られると期待する。アストンの専門家らは価格パターンを分析し、相場を先読みする戦略をコンピューターで作成。大変動時のパフォーマンスを検証し、アルゴリズムを調整する。

  アストン以外にも、XTXマーケッツやシタデル・セキュリティーズ、バーチュ・ファイナンシャルなどが、08年の金融危機後の規制強化を受けた為替ディーリング会社の撤退・縮小によって市場に開いた穴を埋めている。

  大変動の新たな時代は15年に幕を開けた。同年1月、スイス・フランはスイス国立銀行(中央銀行)が上限を突然撤廃したことで、20分で約41%も値上がりした。直近の例では、昨年12月にユーロがアジア取引時間中に数分で1.6%上昇。同年10月には、ほんの数秒で英ポンドが約9%下落した。南ア・ランドやニュージーランド・ドルも同様に乱高下した。リーバーマン氏によれば、アストンはこのポンド急落時に90秒間で5億ドル相当取引した。

  トレーダーは相場急変にうまく対応できなければ大やけどする。JPモルガン・チェースをやめて自己資金でアストンを設立したときのリーバーマン氏の課題は、リスクテーク意欲のあるチームをつくることだった。ニューヨークではエンジニアや数学者の獲得競争が厳しく、同氏はユダヤ教会を通じて、テクノロジーに詳しくイスラエル国防軍の情報組織8200部隊で陸軍少佐を務めた経歴を持つ人物の助けを得ると、テルアビブでチームを採用した。軍事やテクノロジーに詳しくても、金融市場の知識をほとんど持たない社員にはホワイトボードを使って為替売買について教育しながら、相場急変時に利益を得るためのソフトウエアを作り始めた。

  フラッシュクラッシュ時に「理解したいのは、どれが最も見つけにくいが最も時宜を得たトレーディングになるかだ」とリーバーマン氏は話し、「どこかの時点で、フラッシュクラッシュは止まり、価格は適正値に向けて戻り始める」と付け加えた。

  アストンは1日当たり平均して10億-20億ドルを取引する。昨年は11月末まででリターンがプラス22%超だったと、パフォーマンス報告書で明らかにしている。

  市場参加者の多くにとって、フラッシュクラッシュが起きるときは安全策を講じるときだ。ヘッジファンドのファースト・クアドラントのパートナー、ドリ・レバノニ氏はポートフォリオ運用者やトレーダーらは市場の状況が好転するまでは売り買いの注文を出さずに立ち止まると話す。

  だが、リーバーマン氏にとって、その同じ瞬間が行動への時となる。「全体を理解できるように、何が起きたかの断片を集めてストーリーにしようとしている」と同氏は話した。

原題:Flash-Crash Trader Jumps Into Currency Market When Others Flee(抜粋)

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