東芝は11日夕、2016年4ー12月期決算(四半期報告書)を発表した。米原発子会社の内部統制問題をめぐり監査法人と意見の相違があり、当初2月の予定から2度延期していたが、監査意見「不表明」のまま提出に踏み切った。適正意見のない決算は上場基準に抵触する可能性がある。

  PwCあらた監査法人は意見を示した添付資料で強調事項として、米原発事業の巨額損失で債務超過となり格下げされ財務制限条項に抵触したほか、資金環境の悪化などから米原発建設事業は遂行に重大な悪影響が発生する可能性などを指摘。「現時点では継続企業の前提に重要な不確実性が認められる」と注記した。

会見に臨む東芝の綱川智社長
会見に臨む東芝の綱川智社長
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  綱川智社長は会見で、異例となった意見不表明での発表について「このような結果になり誠に遺憾」と株主や関係者に陳謝。米国での調査結果などで「具体的指摘を受けておらず再延期しても監査人の同意が得られるめどがたたない」と判断し延期申請せず発表したと説明。今後は「上場廃止回避へ最大限努力する」と強調した。

  発表資料によると同期の連結純損失は5325億円と、2月に公表した暫定値より赤字幅が拡大。16年12月末の債務超過額は2257億円となり、2月時点の1912億円から悪化した。東芝も開示資料で監査法人の指摘内容を掲載。「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在している」と記載した。

上場廃止基準

  決算延期の原因となってきた米ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)に関する調査については、東芝の監査委員会は16年度第3四半期以外での損失を認識した証拠は発見できず一連の調査は完了したと判断。一方で、監査法人は最終的な調査結果を評価できず、財務諸表修正の必要性を判断できなかったとした。

  綱川社長は会見で、監査法人から適正意見を得られなかったのは米国の調査に関する意見の相違だが、「今回の決算数字には自信がある」とし、通期決算は監査前の数字でも5月中に発表したいと述べた。見解の違いが続く場合、佐藤良二監査委員長は監査人の交代可能性について「いろいろな考え方を検討していきたい」と語った。

  今回の決算は監査法人の決算に対する意見が「不表明」だったことから、東京証券取引所の上場廃止基準の1つである「虚偽記載または不適正意見等」に抵触する可能性がある。今後、東証が「直ちに上場廃止しなければ市場の秩序維持が困難なことが明らかであると認められた場合」は上場廃止となる。

ガバナンス

  東証は現在、過去に不正会計問題を起こした内部管理体制の改善を確認するため東芝株を監理銘柄とし、3月中旬から上場維持の可否を審査している。日本取引所グループ広報・IR部の青沼見和氏は「今回の監査法人の意見不表明を受けて、新たな項目としてそれらにおける事実関係の把握、確認を行っていく」と述べた。

  エース経済研究所の安田秀樹アナリストは企業の決算について、「本来は適正意見をもらって出すべきもの」と指摘。今後は適正意見を受けずに発表した問題が、すでに別に始めている内部管理体制の審査に上乗せされることになるとし、「あとは東証の判断ということになってくる」と見通した。

   東芝は3月29日、WHの米破産法11条の適用を申請し、その影響で暫定的に前期(17年3月期)の連結純損失(赤字)予想が1兆100億円に、期末の債務超過額が6200億円にそれぞれ拡大すると発表している。WHを非連結化して海外原発事業のリスクを遮断し、メモリ事業の売却による債務超過解消と本体の再建を図る。

  発表翌日の12日の東芝の株価は安く始まった後、上昇に転じその後また下落するなど方向感に欠ける展開。午前10時34分現在は前日比2.1%安の218.62円で推移している。

(前送の記事の第6段落の監査委員長名を訂正済みです)

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