コンテンツにスキップする

米債券ボラティリティー、再び高まるか-当局のバランスシート縮小で

米国債や住宅ローン担保証券(MBS)で構成され、約4兆3000億ドル(約478兆円)に上るバランスシートを縮小し始める米金融当局の方針に、債券市場は落ち着いた反応を示している。それでも、こうした静けさが長続きしないと考えられる理由は多い。

  米国債やMBSの市場の仕組みをよく見れば、過去10年近くにわたって抑制気味に推移してきたボラティリティー(変動性)が再び高まる可能性があることが分かる。米金融当局は「漸進的かつ予測可能な方法」で政策転換を進めるとのスローガンを繰り返しているものの、満期証券の償還資金再投資をやめた場合の影響はやはり感じられるだろうと、アナリストは指摘する。

  FTNファイナンシャル(シカゴ)の仕組み商品担当シニア・バイスプレジデント、ウォルター・シュミット氏は、米金融当局のバランスシート縮小の方針について、当局の「歴史で最もよく予想されてきた出来事だ」とした上で、「過去2年間分かっていたもので、待ち続けてきた」と語った。

  第3弾まで行われた資産購入による量的緩和(QE)はボラティリティーを抑えてきたが、2013年に当時のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が購入縮小を検討していると発言し、事態がいかに急速に変化したかは事例として残っている。いわゆる「テーパータントラム」によって利回りは急上昇した。

  米金融当局がバランスシート縮小を巡る本格的な検討に入る中、ボラティリティーが再度高まるかもしれない四つの理由を次に示す。

1.MBS需給の変化

  米金融当局が保有する政府支援機関(GSE)保証付きのMBSは1兆7700億ドル相当で、市場の約31%を占める。金融当局のMBS保有が減り始めれば、市場での追加的な供給への調整として米国債に対するMBSの利回り差(スプレッド)は拡大することになる。

  14年10月のQE第3弾終了以降、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)の30年物カレントクーポンと米国債の利回り差は90-114ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、歴史的平均の約137bpを下回って推移。だがシティグループのアナリストの推計では、再投資縮小の確実性を市場がいったん織り込めば、スプレッドは5-10bp拡大して、長期的にはさらに10-20bp広がる可能性があるという。

2.コンベクシティ・ヘッジの増加

  米金融当局がバランスシート縮小に際して利上げ休止を決めた場合でも、大口の需要源が消失することで住宅ローン金利は上昇することになる。その結果、借り手によるローンの繰り上げ返済のスピードは低下し、証券のデュレーション(残存期間)拡大につながる。

  金利が上昇すれば、モーゲージ債の予想残存期間の拡大に伴い、いわゆるコンベクシティ・リスクに対するヘッジが増える。米国債売却やスワップ契約の締結を通じ、こうした潜在的な損失を予防することによって、トレーダーは債券市場の変動を一層大きくする可能性がある。

3.タームプレミアムの拡大・リスク資産からの資金引き揚げ

  市場が米金融当局のバランスシート縮小に備えるのに当たり、10年物のタームプレミアムには拡大圧力が働く。バンク・オフ・アメリカ(BofA)メリルリンチのストラテジストによれば、タームプレミアムは18-19年を通じて47bp拡大する可能性がある。モーゲージのデュレーションの拡大と相まって、タームプレミアムの拡大で5-10年物イールドカーブ(利回り曲線)はスティープ化も想定される。

  タームプレミアムの拡大は、過去10年近くにわたる米金融当局の緩和策を背景に過去最高値水準にある株式など、リスク資産からの資金引き揚げの契機となるかもしれない。ただ、BofAメリルのストラテジスト、マーク・カバナ氏は「リスク資産との関連性はそれほど確実ではない」としている。

4.米短期債の金利上昇

  米金融当局のバランスシート縮小が始まれば、米国債市場のうち短期債にも影響が及ぶ。米財務省はイールドカーブ上のどの部分で証券発行を増やしたいか決めなければならなくなる。

  BofAメリルのカバナ氏は「財務省は短期債の供給を極めて顕著な形で増やす必要があるだろう」と話す。財務省が短期証券(TB)の供給を増やすと想定した場合、残存期間が1年未満の債券の金利は上昇する公算が大きく、米国債レポの翌日物金利の押し上げに作用する。それは、米金融当局が行っている固定金利方式の翌日物リバースレポの利用減少を招く可能性がある。

原題:Fed’s Big Unwind Risks Reigniting U.S. Bond Market Volatility(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE