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日銀は操作対象10年「短期化」選択肢に、引き締め時-早川元理事

更新日時
  • 長期金利の操作は翌日物金利と異なり利害関係者が多く混乱もたらす
  • 物価見通しは1%台前半に下方修正すると予想-展望リポート
早川英男氏

早川英男氏

Source: Hideo Hawakawa
早川英男氏
Source: Hideo Hawakawa

元日本銀行理事の早川英男氏は、日銀が誘導目標である10年物金利を調整する際は金利自体を引き上げるのではなく、目標の対象期間を8年などに短期化することが「有力な選択肢」になるとの見方を示した。日銀が長期金利の指標である10年物金利を直接操作すると、国債価格の変動で影響を受ける利害関係者が多いため、金利水準を市場に委ね、政策変更による混乱を避けるのが狙いだ。

  富士通総研エグゼクティブフェローの早川氏は7日のインタビューで、米連邦準備制度理事会(FRB)が2010年に金融緩和強化の手段として長期金利に誘導目標を設定し、対象とする期間を2年物金利から必要に応じて延ばす案を検討したことを例に挙げ、「日銀は逆に期間を短くすることで少しずつ調整すれば良い」と語った。

  日銀は昨年9月、金融調節方針の操作目標をマネーの量から金利に転換する長短金利操作を導入。短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」に維持する一方で、長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」に設定した。長期金利が上昇すれば10年物国債の価格は下がり、長期金利が低下すれば10年物国債の価格は上がる。残存期間が長くなるほど価格変動幅も大きくなる。

  生命保険協会の根岸秋男会長(明治安田生命保険社長)は2月17日の記者会見で、日銀が「中期ゾーンを操作対象として、超長期についてはある程度の変動をマーケットに委ねることが、金融政策を遂行する上でのコストとベネフィットに見合うのでは」と述べ、操作対象は10年ではなく5年程度が望ましいとの認識を示した。

アジャスタブルペッグ

  早川氏は長短金利操作とイングランド銀行(BOE)がかつて採用していた通貨ポンドのアジャスタブルペッグ(調整可能な固定相場)制度の類似点を挙げ、その難しさを指摘する。いずれも実体経済と整合的な範囲内では一定の相場を維持するが、かい離すれば調整する仕組みで、調整を必要としない間は「非常に堅固」だが、いったん調整が視野に入ると市場から攻撃され維持が非常に難しいとみる。

  事実、BOEは1992年、ジョージ・ソロス氏率いるヘッジファンドの大規模なポンド売りに耐えきれず、変動相場制に移行した。為替市場と異なり、国債市場は日銀が4割を保有し圧倒的な影響力を持つため、「海外市場が多少荒れてもコントロール不能になることはない」が、長期金利の0%が実体経済とかい離していると思えば「徹底的に攻撃してくる」と早川氏は指摘する。

  誘導目標短期化の最大のメリットは、かつて操作目標だった翌日物金利と同様、「10年物国債の価格を動かしているのはわれわれではない、と言えること」。長期金利が上昇すれば、超長期債を運用する生命保険は歓迎する一方で、地銀・信金は価格下落で損失を被る。中でも最大の利害関係者は国債を発行する政府だ。早川氏は複雑に利害が絡み合う中で、「資産価格を直接動かすことは難しい」と語る。

物価見通しは下方修正へ

  日銀は26、27両日の金融政策決定会合後に公表する展望リポートで、新たな消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)前年比見通しを示す。17年度の見通しの中央値は1月時点で1.5%上昇。早川氏は春闘を前にしたタイミングに加え、円安、原油高だったため同時点では見通しを下げられなかったとした上で、「今回はさすがにあきらめるのではないか」と指摘。1%台前半に下方修正すると予想する。

  2月のコアCPIは前年比0.2%上昇と2カ月連続でプラスになった。原油相場が1バレル=50ドル台、ドル円相場が1ドル=110円台を維持すれば、年末に前年比1%近くに上昇する見通しだが、「原油高と円安の影響だけならそこから落ちてくるので、長期金利の調整の必要はない」と早川氏は言う。

  実力の物価に近い生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは0.1%上昇となお低空飛行が続いている。これが1%程度に上昇してくれば日銀は調整が必要になってくると早川氏はみるが、原油高と円安の影響で今後上昇してくるコアCPIと同様、上向きになるかどうかは「まだよく分からない」としている。

  シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは7日付のリポートで、円安や原油価格の下げ止まりでコアCPI前年比は今後数カ月は上昇する見込みだが、こうした外的要因以外のインフレ圧力は「極めて限定的だ」と指摘。日銀は政策を変更する前に来年の「春闘の結果を確認したいと考えるだろう」とした上で、長期金利目標は年内は0%程度に据え置かれると予想している。

(第3段落に背景説明、最終段落に外部コメントを追加します.)
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