経営再建中の東芝に対して、主力行の三井住友銀行みずほ銀行は融資先の格付けに相当する債務者区分を1段階引き下げて「要注意先」にしたことが分かった。市場では、今回の東芝の債務者区分の引き下げに伴う主力行の与信費用負担は軽微だが、上場廃止リスクが高まれば銀行業績への影響は免れないとの見方が出ている。

  事情に詳しい複数の関係者によれば、三井住友銀など主力行は3月までに債務者区分を引き下げた。これまでは東芝が売却を進める半導体会社、東芝メモリの価値を考慮すれば「正常先」との判断だったが、米原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の米破産法11条の適用申請などにより2017年3月期に大幅な赤字と債務超過に陥る見通しなどから引き下げた。

  ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸年金研究部長は、「会社の中身が悪化したり、隠していたものが出てくれば、銀行も要注意先にしたり、さらに債務者区分を下げていくことは預金者、株主への責任としてやらざるを得ない」と語った。

  銀行は融資先の財務状況などから個別に債務者区分で「正常先」「要注意先 」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の5段階に分類し、債権管理している。銀行は将来の倒産などに備えて段階的に貸倒引当金の積み増しが求められる。

リスクは限定的

  JPモルガン証券の西原里江アナリストは3月29日付リポートで、多くの銀行が東芝を「要注意先」以下に置いていると推測される中、「多くが20%程度の引き当てとしても、17年3月期決算の着地にはサプライズとなるリスクは限定的」とみる。西原氏は、主力3行(三井住友、みずほ、三井住友信託銀行)と三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で引当率5ー20%程度なら与信費用負担は合計250億ー350億円、40%程度でも500億ー700億円と試算している。

  17年3月期の与信費用計画と16年12月(第3四半期)の与信費用実績は、三井住友Fが1800億円の費用予想に対して680億円の費用、みずほFGが600億円の費用予想に対して59億円の戻入益だった。17年3月期純利益見通しは三井住友Fが前年同期比8.2%増の7000億円、みずほFGが同11%減の6000億円を予想している。

  東芝に対する債務者区分について、三井住友銀とみずほ銀の広報担当者はともに個別案件に関してコメントを控えた。

与信判断が厳しく

  東芝は3月29日、WHの破産法適用を申請するとともに、今期(17年3月期)の連結純損失(赤字)が1兆100億円に、債務超過額は6200億円にそれぞれ拡大する見通しだと発表した。30日に開催した臨時株主総会では、主力の半導体事業の分社化と新会社「東芝メモリ」株式の過半を売却する方針を決めた。

  複数の関係者によると東芝は4月4日の銀行向け説明会で、米WHの破綻処理で新たな運転資金が必要になったことなどから追加融資を要請した。今年度、最大1兆円の資金需要が見込まれ、既存の融資枠などを使っても3000億円程度が不足する可能性があるという。

  西原氏はリポートで、東芝にはWH破産法適用の影響で「数千億円規模の銀行追加融資が必要になる見込み」と分析。追加融資は主要行中心に負担しても半導体の株式が担保となることから、「その価値が減額されない限り追加の与信費用負担にはつながらない」とみている。ただし、「上場廃止になれば銀行の債務者区分引き下げで与信コストが跳ね上がる可能性がある」と指摘する。

  東芝はWHの内部統制問題に関する調査を理由に4-12月期決算の発表を2月と3月に延期しており、次の期限は4月11日。事情に詳しい複数の関係者によると、11日の発表に間に合わない可能性がある。企業は決算の延期申請ができるが、関東財務局が認めなければ、8営業日以内に開示する必要がある。それができなければ、上場会社の開示規則(上場廃止)に抵触する。

  野村証券の魚本敏宏チーフクレジットストラテジストは、東芝が上場廃止の場合には「債務超過の問題や内部統制が不適切であったが故に追いやられることになれば、銀行がこれまでと同じ対応ができない可能性がある」とみており、「与信判断が厳しくなる可能性がある」と語った。仮に上場廃止となれば「資金調達の柔軟性は低下するとみるのが自然。そのことによって、当然、事業の回復時期は延びる」と指摘する。
 

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