ANAホールディングス(ANAHD)は、国際航空連合(アライアンス)での共同運航などに加え、海外各社と出資を伴う提携も推進する考えだ。業界では出資とともに業務提携するのが世界的潮流の一つになりつつあり、成長が続くアジアなどで提携先を模索して優位性の向上を狙う。

  ANAHD傘下で中核航空事業を担うANAの平子裕志社長はインタビューで、「昨年ベトナム航空に出資を完了、取締役も1人送り、実のある経営形態になった」と述べ、「既にいろいろなシナジー(相乗効果)が生まれつつあり、成功事例となった」と話した。昨年5月にベトナム航空の株式約8.8%を総額2兆4310億ドン(約117億円)で取得し、国内外40路線で共同運航すると発表し、旅客チェックイン、地上支援、機体整備など関連業務でも相互協力している。

平子裕志社長
平子裕志社長
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  今後の提携について、平子氏は「アジアは成長力が高く大きなチャンスが想定されるが、必ずしも成長力だけが重要なポイントでなく、われわれのグローバルなネットワークを補完できるシナジーがあるのかが見極めるポイントだ」と指摘。その上で、有力な地域や会社があるかは「敏感にアンテナを張り巡らしパートナー探しをしたい」と抱負を述べた。以前はANAHDの最高財務責任者(CFO)として国際線の成長戦略に深く関わり、ANA社長には1日付で就任した。

  同業のアメリカン航空は中国の南方航空に、米デルタ航空は東方航空にそれぞれ出資・提携すると公表。アブダビを本拠とするエディハド航空なども同様の発表をしていた。平子氏は「出資でパートナーシップを強固にし、シナジーを見込むのは私たちとベトナム航空と同じ形」とし、「従来の出資を伴わない提携から、エクイティ(株式)を一部入れた提携の流れは世界で出てきている」という。

  平子氏は、国際航空競争の形態が「変わりつつあるとの認識はあり、この形が主流になるかどうかは分からないが、私たちとしてはエクイティを十分考慮しながら今後もパートナーを探していきたい」と述べた。

ミャンマーで合弁会社の就航18年にも

  ANAはベトナム航空のほか、ミャンマーで現地企業と連携してヤンゴン国際空港を拠点とする国際線専門の航空会社を設立、早ければ2018年の就航を目指して調整を進めている。平子氏はミャンマー事業について「国の事情などもあり、まだ少し時間がかかりそうだ」と話した。中期経営計画では、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への出資拡大の方針を打ち出している。

  ANAは世界三大アライアンスで最大規模のスターアライアンスに加盟し、独ルフトハンザ航空と共に主力メンバーとして国際線網の拡充に注力してきた。ライバルのJALには国際線網で上回り、業績面でも国際線拡充に伴い成長を続けている。アライアンスでの共同運航などの協力が依然として主流である中、平子氏は、出資を伴う2社提携を「世界の航空会社が今後模索していく」との見通しを示した。出資を伴う提携では、外資制限などの規制がある中で少数株主としてどこまで相乗効果を得られるのか探求することが大事だと強調した。

  シティグループ証券運輸担当の姫野良太アナリストは、「出資を伴う提携自体の方向性は評価している。また、ベトナム航空との提携メリットがあるのも間違いない」との見方を示した。ただ、詳細が開示されておらず、出資金額に対しての顧客増や売上高など定量的な効果の見極めが必要だと指摘。出資を受ける「新興国の航空会社の方も、海外大手との資本・業務提携は緩やかなアライアンスより信用力やブランド力の向上に直結し、同時に資金調達の意味でも効果が大きい」と語った。

当面は足元固め

  国際線の展開について、平子社長は「これまで年間3、4路線ほど拡張してきたが、当面路線展開はペースダウンする。ここ数年は踊り場と捉え足元を固めたい」として、既存路線の機材更新や便数増加、サービスの拡充に注力するとした。ANAは、16年度末までの3年間で、海外都市10都市に新規に就航し、旅客便就航都市数を42都市に増やした。2月には、国内航空会社で初となる成田-メキシコシティ間の直行便を開設したばかり。

  また、3月末で5年間の国土交通省による経営の監視が終了したJALについては、破たん後に公的支援を受け財務体質が改善されたことで「どう出てくるのか対応を見極めたい」と語った。16年末のJALの利益余剰金は約6200億円とANAのほぼ2倍となっている。「JALに加えて外国航空会社もパートナーでありライバル。世界的な流れのなかで自らの立ち位置を再確認するのが課題だ」と話した。

  アナリストの姫野氏は「国際線を急拡大させてきた反面、サービス面やコストなどで追いついていない部分があったのは事実」とした上で「20年の羽田拡張に向けた準備の体力温存期間とみればこの戦略は正解」とみている。

  ANAHDの15年度の連結業績は国際線拡大がけん引する形で売上高、営業利益、純利益でそれぞれ過去最高を更新。16年度の見通しは、売上高が前年度比2.9%減の1兆7400億円、営業利益は6.3%増の1450億円、純利益は2.3%増の800億円を見込む。同社は28日に17年3月期の決算発表を予定している。ANAHD株の午前終値は前日比2%安の326.1円。

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