現代版シルクロード:中国は西方への影響力拡大目指す-QuickTake

「シルクロード」という言葉はキャラバン、砂漠の草原、そして中国と中央アジア、中東、アフリカ、欧州をつなぐ古代の交易路を旅するマルコ・ポーロのような冒険家をイメージさせる。中国が目指している現代版シルクロードは、鉄道、港湾、パイプライン、ハイウエーのネットワークを通じてこうした交易路を復興させようというものだ。中国の習近平国家主席はこのプロジェクトに特に力を入れており、国内で過剰に生産された商品の新たな市場が確保できるほか、一帯の開発や友好、経済的統合が促されると意気揚々だ。一方、シルクロードやその影響を批判的に見る向きは、中国がその影響力をさらに西方へと拡大しようとする意図が見えると、これに警戒感を示している。

現状

  習主席はインフラ開発を通じて貿易促進を狙うという数百億ドル、あるいは数千億ドルにも達する規模の計画の概要を示している。計画の代表的なものはマレーシアタンザニアでの港湾開発、パキスタン、タジキスタンでのハイウエー整備などだ。その過程で中国は公益などのプロジェクトに投資するよう自国企業に働き掛けている。これらの野心的プロジェクトに資金を融資するため、中国政府は2014年に400億ドルを拠出して「シルクロード基金」を設立しており、すでにパキスタンでのダム事業、ロシアでの液化天然ガス事業に同基金から投資を行っている。そのほか、BRICSの5カ国が主体となる新開発銀行や中国が主導する資本金1000億ドルのアジアインフラ投資銀行(AIIB)などが資金面の支援を行う。AIIBは世界銀行の代替・補完を目指す機関だが、米国と日本は当初そのガバナンス基準を批判していた(世界銀行の規定に比べ社会・環境に対する影響への配慮が不十分など)。

  このシルクロード構想を通じて、中国は十分に活用されていない自国の生産能力や過剰に生産された鉄鋼や他の素材を有効活用することのみならず、世界での人民元の利用拡大を目指すことでも利益を得る見通しだ。これに参加する国はその経済的メリットと、支配力を強めるスーパーパワーの要求をてんびんにかけている。例えば、タイでの鉄道プロジェクトは、商業財産権の付与を求める中国の要求を現地当局が拒んだことで頓挫した。

背景

  習主席が最初にシルクロードの復興を提唱したのは13年であり、続けてその構想を「一帯一路」と呼んだ。交易路の原型は2000年以上前に確立したが、古代ローマのエリート階層に重宝された繊細な生地に由来するシルクロードという名称は、ようやく19世紀になってからドイツ人地理学者が命名したものだ。その全盛期には紙や火薬、陶磁器、香辛料が西へと運ばれ、復路では馬やじゅうたん、毛布、金、銀、ガラスがもたらされた。仏教僧も布教のためにこれを利用したように、現代版シルクロードは商業目的だけではない。中国は、東南アジアおよびアフリカを通る海路をクルーズ船で定期運航させる計画のほか、シルクロード沿いの国々の文化交流を狙った映画祭やブックフェア、奨学金制度、共同運営の学校の設立といった構想も提案している。

論点

  中国は、現代版シルクロードを東西に囲まれた途上国の工業化を後押しするものと位置付けている。エコノミストもこの取り組みがアジアおよび世界の経済成長を刺激する可能性を持っている点を認めている。リスク要因としては、腐敗に脆弱(ぜいじゃく)な地域(2016年にはキルギスの首相が中国企業への道路工事契約の付与に関する不祥事で辞任に追い込まれた)で汚職が横行することや、大掛かりな開発が維持費のかさむ無用の長物となってしまう可能性(一例として、1日にわずか数便が利用するだけのスリランカ南部の国際空港)などが挙げられる。特定のプロジェクト、特に多額のコストを要する陸上のルートは単に採算が合わないものとなるリスクもある。

  また、中国がアジアの海域を中心に地域での軍事活動を積極化している点を指摘する向きもある。港湾開発は軍事基地を設ける布石ではないかとの疑念が生じているほか、南シナ海を巡る問題で仲裁裁判所が下した判決を中国が拒否していることも、国際法の原則を尊重しないとの懸念を招いている。これに加え、国内景気が減速局面にある中、中国がコストのかさむ海外投資をどの程度の期間続ける用意があるのかも疑問視されている。

原題:Silk Road Pushes China’s Money, and Influence West: QuickTake(抜粋)

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