もうあんな辛い思いはしたくない――。景気後退や政局不安などから格付け会社に投資不適格扱いにされたブラジル債。2年前の暴落を経験した投資家からは、こんな声が聞こえてもおかしくないはず。それでも、日本の投資家は同国債の投資に妙味を感じているようだ。

  「国内で良い利回りが得られる金融商品はほとんどない、10%前後の金利が付くブラジル国債は本当に魅力がある」。美容機器メーカーの社長で、投資歴50年の栗本小三郎氏(79)は、ブラジル国債を少なくとも10年間持ち続けている。

ブラジルのカーニバル風景
ブラジルのカーニバル風景
Photographer: Dado Galdieri/Bloomberg

  ブルームバーグの集計データによると、2015年末から3月末時点の金利収入を含むブラジルレアルの対円トータルリターンの上昇率は約37%だった。過去10年では年約50%の評価益が出たときもあるが、20%以上の評価損が発生したこともあるハイリスク・ハイリターン型だ。それでも個人投資家が惹かれる理由は国内債の10倍近く得られる利息と税制面でのメリット。ブラジル国債投資は「みなし外国税額控除」が適用されており、利払い金について源泉徴収された外国所得税相当額のほとんどが確定申告によって還付される。

  モーニングスターが集計したデータによれば、日本の外債投資信託のうち、今年2月末までの運用成績上位10はすべてブラジル・レアルに関連したもので、最大77%のリターンを記録している。外株投資信託でも上位10のうち、9位までがブラジル関連が占めている。

  三菱UFJ国際アセットマネジメント外部委託運用部のシニアマネジャー、久我充昭氏は、「日本からのブラジルへの投信は増える可能性がある。政策金利の引き下げが続く中、現政権の下で景気の回復、財政収支の改善が期待され、ブラジル株式市況は今後も堅調に推移すると考えているからだ。ブラジルレアルも対円で堅調に推移しており、投資家のリスク志向も強まる」とみている。

  一方で別の専門家からは反対意見も聞かれる。ゴールドマン・サックス・グループは世界中がブラジルに傾いているわけではなく、日本は例外的だと指摘。同社の南米エコノミスト、アルベルト・ラモス氏はインタビューで、強力な国際証券投資の流れはブラジルにはまだ回帰していないとし、海外投資家はブラジルに対して建設的だが、財政問題、弱い景気、労働問題などをめぐる不透明感からまだ高い賭けには出ていないと述べた。

  日本の国債利回りは、日本銀行による異次元金融緩和の浸透で皆無に等しく、国内の債券投資家が海外に目を向けなければならない状況を作っている。残存年数8年未満の利回りはマイナスで推移したままとなっており、国内の金融機関にとっては、およそ1800兆円という中国の国内総生産を超える規模の日本の個人金融資産からの流出先が気になるところだ。
 
  アセットマネジメントOneの投資信託プロモーション部マネジャーの宅田寛氏は3月23日のインタビューで、「レアルの回復や高利回りを理由に、ブラジルが日本の個人投資家の視界に戻っている。緩やかながら底堅いトレンドが続くというのが流れだと思う」と述べた。

  投資信託協会によれば、ブラジル公社債へ投資する投資信託の純資産総額は11年に過去最高の2.2兆円にまで膨らんだ。その後は商品市況の不振で同国の景気が悪化したのに伴い、関連投信も縮小。2月末現在の残高は4556億円だった。前月比では一進一退も前年比では3カ月連続でプラス基調を示している。

  栗本氏は、「ブラジル国債に投資し始めた当時、ブラジルはオリンピックと共に成長見通しに大きなポテンシャルがあった。その時にそれを一生のポートフォリオと決めた。一時期と比べると成長という面で、ポテンシャルが少なくなっているかもしれない。それでも一定の割合で利回り収入があるものとして期待している」と語った。

  ブラジル株式へ投資する投資信託の純資産総額は10年に過去最高の6559億円を記録。16年2月には707億円まで縮小したものの、今年2月には1167億円まで持ち直し、3カ月連続で増加している。株式や公社債などを含めた全体では、5カ月連続で増加している。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE