電線の地中化を巡り市場では関連銘柄に対する期待が先行している。無電柱化を推進する小池百合子氏が2016年6月末に東京都知事選への出馬を正式表明して以降、地中化工事に必要なコンクリート製品を製造する企業や電線メーカー、関連工事会社の株価が上昇。しかし、無電柱化の工事は長期に及ぶもので、各社の短期的な業績への影響は限定的で思惑やネット上のうわさだけで買われている企業もある。

  国土交通省の試算によると国内の電線総延長はおよそ240万キロメートル。このうち地中化が済んでいるのは1%にすぎず、1キロメートルあたり5億3000万円が必要とされる従来工法の地中化コストを基に試算すると、国内全体で1000兆円を超えてしまう。政府は、工法に対する規制を緩和してコスト低減を進める考えだ。

八王子市の電柱
八王子市の電柱
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

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  コンクリート製品のイトーヨーギョーの株価は、小池氏の都知事選当選前の7月15日から25日までの10日間で約8割上昇。同社は、地中化計画の中心だった幹線道路に比べて手が付けられていない狭い道路に適した地中化商品の開発に力を入れている。四角い筒状のボックスを連ねて電線や通信ケーブルを収納するという低コストの工法を開発し、京都市先斗町通の狭い路地を対象にした無電柱化事業での採用を目指している。

  同社の神代丈生常務取締役は「従来なかった市場を開拓できつつある」と話す。国や地方自治体が実施する道幅の狭い道路でのモデル事業を通じて無電柱化に求められる製品の規格や基準が固まるとみており、実際の収益貢献は「東京五輪後」になると予想している。電線地中化に関連する商品を「将来的には主力商材として成長させたい」と話した。

新設電柱の抑制

  政府は年7万本のペースで増え続けている電柱の増加を抑制するため、16年度に国道への電柱新設を禁じた。その取り組みは東京都や静岡県が管理する道路などに広がりつつある。電柱業界最大手でシェア3割を握る日本コンクリート工業広報担当の土屋博道氏は「長期的にはマイナスの影響が出ることは避けられない」と語る。

  しかし、同社は地中化に用いられるコンクリート製品の製造販売も手掛けており、都知事就任直前の1カ月間で株価は約4割上昇。今年3月には約1年半ぶりの高値を付けた。地中化関連商品では競合する企業が多いことから、電柱関連のマイナスを補うために東京五輪に向けて整備の進む高速道路や地下鉄のトンネル内壁として使用されるパネルの製造販売の強化に取り組んでいる。

  小池都知事就任前の昨年6月下旬から株価が最大で約8割上昇したジオスターの製造するコンクリートパネルは、直径1.8メートル以上のトンネル内壁用で、電線地中化に使われる場合は、幹線道路の地下に敷設する電線共同溝に限定される。総務チームの加藤桂一課長は、幅の狭い道路には向かず、「将来的に地方で電線共同溝の需要が出てくるのかもしれないが、今は聞いていない」という。

誤情報で株価上昇

  日本電線工業会によると、東京五輪などに向けて電線需要は回復しており、17年度の銅電線需要は前年度比2.8%増を見込む。同会の小沢一基調査部長は「無電柱化に伴う需要見通しの規模感は分からない」とし、今年度の需要見通しにも無電柱化需要は織り込んでいない。

  沖電線の株価は昨年6月後半から1カ月で約6割上昇。内藤雅英IR室長は、株価上昇は電線地中化で電線の特需が予想されるなどとインターネット上で騒がれたことが一因だという。しかし、ロボットや検査機器用のケーブルを主力とする同社にとって、電線の地中化が業績に与える影響は「ほとんどない」と指摘する。東京特殊電線も6月末以降、株価は2倍以上に上昇したが業績への影響は限定的だという。

  今年1月に株価が20年ぶりの高値を記録した関電工は、社内に地中化工事を請け負う専門チームを立ち上げて需要増に備える。広報の青木奈津子氏は、地中化を推進する小池都知事の政策の影響が業績に及ぶようになるのは「五輪以降になりそうだ」と述べた。

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