部外者の目からは、米連邦破産法11条はあたかも魔法のつえのように見える。負債を抱えていた企業がこれを返済し、外見上無傷になって復活するからだ。

  米石炭会社アーチ・コールは2016年1月に11条に基づく会社行程手続きの適用を申請した際、45億ドル(現在の為替レートで約5000億円)の純債務を抱え、時価総額は数百万ドルしかなかった。裁判所の管理下で9カ月に及ぶ再建計画を進めた結果、同社の現在の価値は17億3000万ドル、ネットキャッシュは3100万ドルになった。

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Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Images

  東芝の株主は、29日に11条の適用を申請した米原子力子会社ウェスチングハウス(WH)にも同じことが起こるよう望んでいるようだ。もし裁判所がWHに免罪符を与えようとしているのなら、誰かが信用市場に伝えなければならい。

  東芝のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)とWHが契約を締結している米電力2社、サザンとスキャナのCDSを比べてみよう。3社のうち1社が最も苦しむと投資家が予想しているのは明らかだ。東芝の社債1000万ドルをデフォルト(債務不履行)から5年間守るための保証料は42万3000ドル。これに対しスキャナは7万8000ドル、サザンは6万4000ドルだ。

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  東芝は原子力事業から多くの打撃をバランスシート上で被る可能性に直面しているが、その大半は比較的小さいものであるか、既に織り込み済みのものだ。だがサザンとスキャナ両社との取引は違う。両社の子会社への支払い保証は東芝によるWHへの債務保証の90%を占める。

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  政府救済は別として、東芝の投資家のかすかな願いは破産手続きの厄介なプロセスにおいてこうした負債の一部を第3のプレーヤーが肩代わりすることが容認されることだろう。例えば米政府はサザンの原子炉の保有者に83億ドルの融資保証を行っており、これがプロセスを複雑化する可能性もある。

  サザンとスキャナ両社の債権者は心配していないようだ。スキャナの22年2月償還債(表面利率4.125%)はこの1年以上、額面割れになっていない。サザンの子会社は先月、起債によって資金を集めたばかりだ。

  これは東芝にとっては懸念材料のはずだ。破産法11条の背後に魔法の呪文はない。11条で負債が完全に消えることはない。負債の大半は再編されて下位債権者にヘアカット(減免)を課し、最も切迫している債務という形態から比較的余裕のある株式に一部が転換されるにすぎない。サザンとスキャナ両社の債権者が希望を持っているとしたら、東芝の株主はやっかいな連鎖反応に備えなければならない。

原題:Westinghouse Chapter 11 Bankruptcy Won’t Save Toshiba: Gadfly(抜粋)

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