トランプノミクス、またの名は「口先介入」-QuickTake

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ドナルド・トランプ氏は次期大統領として最初に行った記者会見で、高額な薬価により「殺人罪を犯していながら罰せられていない」と製薬会社を批判し、米国内での薬価決定に入札を導入する方針を表明した。これを受けて製薬会社の株価指数は大きく下落した。典型的なトランプ節であり、エコノミストの言う「口先介入」、すなわち将来の行動で脅迫して今の市場を動かす行為だ。

トランプ大統領

Photographer: Ron Sachs/Pool via Bloomberg

  米国の大統領と連邦準備制度理事会(FRB)議長は口先介入を行ってきたことがあるが、通常は舞台裏での発言や慎重に作成された声明の中でのことだ。だが、トランプ大統領は新たな大統領専用機「エアフォースワン」のコスト削減や、企業による雇用の海外移転の阻止を思いつくとツイッターで攻撃し、強要し、脅迫する。週ごとに政策は変化し、明らかに標準的な経済の型にはまらない。より不透明なのは、こうした場当たり的なアプローチが大統領の宣伝する結果を生むのかという点だ。以下にトランプノミクスの基本的な要素の一部を紹介する。

雇用

  トランプ大統領は他の共和党議員同様、経済成長が雇用を創出すると時折口にする。だがそれ以上に、世界の雇用には決まった数があるかのような主張をする。他国によって雇用が「奪われ」、交渉によって取り戻すと訴える。海外の工場への投資計画を中止するよう企業を丸め込む際には、ディリジズム(経済統制政策)として知られる典型的な欧州型アプローチを利用する。国の利益を雇用者の利益や自由市場の原理に勝るものと位置付けて企業の投資に影響を与える手法だ。この口先介入は結果を生んでいる。1億5200万人を雇用し、定期的に1カ月に15万人以上の新たな雇用を生み出している経済では取るに足らない影響かもしれないが、大統領選以降フィアット・クライスラー・オートモービルズ、ウォルマート・ストアーズ、ロッキード・マーチン、スプリントや他の数社の大手企業が20万人超の規模で米雇用を増やすと約束している。これに対し批判的な向きは、大統領の機嫌取りの手段としてトランプ氏が功績を主張できるものへと企業が既存の計画を作り変えているのが実情であり、こうした数字は幻想にすぎないとしている。

貿易

  トランプ大統領は貿易には保護主義の立場だ。大統領就任後最初の1週間で、オバマ前大統領が何年もかけて交渉してきた環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を通告した。欧州連合(EU)との自由貿易協定も同様の結果に終わる可能性が高いが、大統領の側近によると、英国との二国間交渉には前向きなようだ。北米自由貿易協定(NAFTA)を「米国がこれまでに結んだ中で最悪の貿易協定」と評した大統領は、協定見直しに向けてカナダ首相とメキシコ大統領をワシントンに招待した後、メキシコ側が国境の壁建設の費用負担を拒否したことを理由に同大統領との会談を中止した。また中国については、製品を米国に安く売ろうと為替を操作している為替操作国であると認定するよう財務長官に指示すると言っていた。中国は今のところ影響を感じていないようで、まだ何の譲歩も示していない。

財政政策

  トランプ大統領は社会保障制度やメディケア(高齢者向け医療保険制度)の手当を維持する意向を示しており、給付金制度の点では共和党より民主党寄りだ。また、最大1兆ドルをインフラ投資に向けるとの方針も典型的なリベラル派のアプローチであると同時に、大統領選での勝利に貢献したブルーカラー労働者に報いる一つの手段でもあり、共和党の財政タカ派と一線を画す。大統領はこのインフラ投資を実現するために金利が低水準にある間に借り入れを行うとの見通しを時々示しているが、大統領顧問は税額控除を通じてこれが実現できると述べている。トランプ氏は経済成長刺激のために減税を行うという共和党の標準的な方針は堅持しており、独立系アナリストによると大統領の目指す所得税および法人税の減税計画によって今後10年間で少なくとも4兆ドル、最大で6兆ドル赤字が膨らむ見込み。この財源としてトランプ氏は議会共和党のように成長促進を通じた税収増を織り込む「ダイナミック・スコアリング」を選好する考えを示している。

金融政策

  トランプ大統領は大統領選挙期間中にしばしば冷笑の対象としてFRBを名指しして、イエレンFRB議長がオバマ前大統領の雇用面での実績を高めるために金利を「人為的に低く」抑えていると非難した。大統領のこうした意見は、不動産開発業者としての個人的経験に影響を受けたものと思われる。1980年代と90年代に今よりもっと高い金利で資金を借り入れていたトランプ氏は、そうした高金利が当たり前だった世代の人間だ。イエレン議長の下でFRBは、自然利子率が歴史的な水準よりずっと低い、恐らくはゼロを下回るレベルですらあるとの見解にたどり着いている。トランプ氏は金融政策に関して時にリバタリアンの資質を見せ、政策審議の監査を定期的に行い中央銀行の独立性を弱める法律の制定を支持している。

ドル

  大統領選挙の結果判明からトランプ氏が大統領に就任するまでの間に、ドルは主要10通貨のバスケットに対し5%近く上昇した。新大統領が法人税率を引き下げ巨額のインフラ投資を行い、多数の規制を緩和するとの期待がドルの押し上げ要因となった。だが、ドル高は米国の製造業企業の活性化を通じて何百万もの新たな雇用を生み出すとするトランプ氏が掲げたもう一つの公約の実現を阻む。これには、輸出業企業が国外でより多くの製品を売ることができるようドルを下落させる必要がある。就任前のウォールストリート・ジャーナル紙とのインタビューでは為替安誘導を狙ったトランプ流の口先介入が行われ、ドルは「強過ぎる」との発言にドル相場は型通り若干下落したが、それも一時的かもしれない。大統領の公約通り減税と歳出拡大が功を奏して景気が過熱すれば、FRBは想定している以上に積極的な利上げを迫られる可能性があり、その結果、ドルの投資家を呼び込みドル高がより進行する。トランプ氏にとってさえ資本の流れを思うままに動かす口先介入は困難であり、歴代の大統領が通貨への言及を回避しようとするのはこのためだ。

原題:Trumponomics Is Jawboning by Another Name: QuickTake Scorecard(抜粋)

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