自民党安全保障調査会(今津寛会長)は29日午後、北朝鮮の弾道ミサイル発射を踏まえた政府への提言をまとめた。これまで米国に依存してきた敵のミサイル基地に反撃する能力を日本が独自に保有するため、政府が直ちに検討を開始するよう求めている。

  提言は核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮の挑発行為は「わが国が到底看過できないレベル」に達したと指摘。「巡航ミサイルをはじめ、わが国としての『敵地反撃能力』を保有すべく、政府において直ちに検討を開始すること」と明記した。小野寺五典元防衛相が座長を務めた検討チームが案を作成、調査会と国防部会の合同会議で了承した後、公表した。

  自衛隊は発射されたミサイルを上空で迎撃するシステムは持つが、敵のミサイル基地を無力化するための装備は現行憲法下では保有してこなかった。北朝鮮は2016年以降、2回の核実験と20数回に及ぶミサイル発射を実施。3月6日には4発の弾道ミサイルを同時に発射しており、日本政府はいずれも約1000キロ飛行し、うち3発は日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと推定している。

実現には時間

  敵基地攻撃能力の保有は、自民党の国防関係議員にとって長年の懸案。13年に党がまとめた防衛政策に関する提言書にも盛り込まれているが、政府が同年末に閣議決定した「防衛計画の大綱」は「弾道ミサイル発射手段等に対する対応能力の在り方についても検討の上、必要な措置を講ずる」と間接的な表現にとどまっている。

   今津氏は合同会議終了後、記者団に対し、「国民の不安を払しょくするため責任政党の責務として議論した」と述べた上で、実行されると確信していると語った。

  閣議決定が必要な防衛大綱の改定には公明党の合意が必要となる。同党の遠山清彦衆院議員は、敵地への攻撃能力保有は日米安全保障体制の在り方にも影響する簡単ではない事案であり、米国とも協議する必要があるとの見方を示した。

  自民党検討チームのメンバーでもある岩屋毅衆院議員も28日のインタビューで、実際に敵地への反撃能力を保有するまでには「かなりの時間と予算が必要」だと述べている。

  費用も課題となる。岩屋氏は、敵地反撃用のミサイルだけでなく、その周辺装備も必要となることから「コストと効果の面で十分な勘案が必要」と述べた。自主開発では時間がかかる一方、米軍の巡航ミサイル「トマホーク」はこれまで他国での導入実績がないという。

予算措置

  自民党安保調査会の提言は、政府がミサイル防衛の強化策として検討している高高度防衛ミサイル(THAAD)や地上配備型イージスシステム「イージス・アショア」の導入の可否について「成案を得るべく政府は直ちに検討を開始」するよう提案。同時に多数のミサイルを発射された場合でも対応できるよう「早急に予算措置を行うこと」も求めている。

  同調査会メンバーは近く政府側に提言文書を手渡す方針。菅義偉官房長官は29日午後の記者会見で、自民党から提言を受けた場合は「しっかり受け止めたい」と述べた。

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