トランプ米大統領と中国、貿易戦争で激突するのか-QuickTake

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昨年の選挙期間中、ドナルド・トランプ氏は頻繁に中国に言及した。米国から雇用や知的財産、資本の多くを奪っているとの批判を続け、中国という単語を発音することに取りつかれているようだった。

  大統領に就いた今、トランプ氏は中国に対し行動を起こす機会を手にした。だが、貿易戦争は本物の戦争同様、報復攻撃や巻き添え被害を招きかねず、公約していた対中砲火の一部をすでに先送りしたのではないかと思われる。

1. トランプ大統領の対中政策

  トランプ氏は選挙期間中、「大統領就任初日」に中国を為替操作国に認定すると宣言していたが、それは実現しなかった。また、「不公平な補助金政策」に対し訴訟を起こし、「貿易摩擦を解消するため大統領に法的に認められるあらゆる権力」を行使するとも述べていた。中国からの輸入品に45%の関税をかけると主張していたこともあったが、後にそれを言ったことを否定している。

2. 中国は為替操作しているのか

  中国と競合関係にある米国などは、中国が意図的に人民元安を誘導して国内輸出企業の競争力を不当に高めていると長年にわたり批判してきた。だが、中国は過去10年間、ドル・人民元のより自由な変動相場制への移行を探ってきた。

  国際通貨基金(IMF)は昨年、特別引き出し権(SDR)の5番目の基準通貨として人民元を採用。これはラガルドIMF専務理事が言うように、中国が「ルールに従った経済ゲーム」をプレーし始めたことが評価された結果だ。米国は人民元について「大幅な過小評価」との批判をやめ、中国は最近、元安誘導というより元相場を支える取り組みを行っている。これらがトランプ政権が口頭での対中攻撃を後退させた理由かもしれない。ムニューシン米財務長官は、中国が不正行為を行っているか否かの判断について、為替市場の四半期評価まで待つ方針を示している。

3. トランプ大統領に何ができるか

  米国の大統領には議会の承認なしに貿易に関する決断を行うことのできる幅広い裁量が認められている。1974年通商法は、「通商協定に違反する、または不公正な貿易慣行を用いる外国」に対し関税を課したり他の制裁を加えたりできる権限を大統領に与えているほか、「米国の大幅で深刻な国際収支の赤字」を根拠に関税率を最高150日間にわたって最大15%引き上げることを認めている。

  オバマ前大統領は2009年にこの通商法に基づく権限を活用し、中国製タイヤの輸入に関税を課した。トランプ大統領も中国に対する不服を世界貿易機関(WTO)に申し立てるよう貿易交渉の担当に命じることができるが、過去のケースを見る限り、そのプロセスが終了するまでに何年もかかることもあり得る。

4. 中国への影響は

  輸出大国である中国にとって、貿易戦争は経済の収縮やデフレを招き、11兆ドル(約1220兆円)規模の国内経済に大きな打撃を与えかねない。大和証券キャピタル・マーケッツ香港の頼志文(ケビン・ライ)エコノミストは、トランプ氏が選挙活動中に示唆していた中国製品に対する45%課税が実施されれば、中国の対米輸出は87%落ち込むと試算。これは4200億ドルに相当し、やがて中国の国内総生産(GDP)を4.8%抑制し、関税率が15%にとどめられた場合でも、中国のGDPは1.8%減少するとしている。

5. 中国は反撃できるか

  反撃は可能だ。中国は米国の裁判所またはWTOを通して、米国に対する法的手続きを開始することができる。米国の特定企業や製品を対象に関税を課すという方法で対応することも可能なほか、米企業を税務・反トラスト調査の対象とすることもできる。

  中国共産党機関紙、人民日報の国際版である環球時報は、中国が講じる可能性のある「目には目を、歯に歯を」との報復措置として、「ボーイングから購入する予定の航空機をエアバスから購入する。米国車とiPhone(アイフォーン)の中国での売り上げは落ち込み、米国産の大豆、トウモロコシの輸入は停止される。米国に留学する中国人学生の数を制限することもできる」と指摘している。

6. 中国による報復措置の影響は

  恐らくは、トランプ大統領を熱心に支持する層である労働者階級の米国民が経済的な打撃を受けやすい。衣料品から家電に至る幅広い種類の製品の価格が上昇する恐れがあるほか、世界貿易への依存度の高い農業や工場での雇用が脅かされかねない。

7. トランプ大統領は中国にとって厄介な存在でしかないのか

  必ずしもそうとは言えない。ブルームバーグ・ビューのコラムニストでジャーナリストのマイケル・シューマン氏によると、中国は経済ナショナリズムに根差した貿易戦争を通じ直接対決することに意欲満々だ。

  またトランプ大統領は環太平洋連携協定(TPP)離脱という選挙公約を実行する大統領令に速やかに署名。オバマ前大統領はTPPについて、中国より優位に立つことのできる世界的な貿易協定だと説明していた。米国がTTPを離脱する中で、中国はアジアに広がる自らの貿易協定を追求し続けることができる。

原題:How That Trump-China Trade War Could Play Out: QuickTake Q&A(抜粋)

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