海運大手の日本郵船商船三井川崎汽船の定期コンテナ船事業が統合する新会社は、営業初年度となる2019年3月期から黒字化を目指す。3社はターミナル利用料やトラック料金などのコスト削減により年間1100億円の統合効果を見込んでおり、その実現を最優先する方針だ。

  3社は7月に新会社を設立し18年4月からサービスを始める予定。日本郵船のコンテナ事業を含む一般貨物輸送本部長を務める丸山英聡専務はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、「統合効果がフルスイングで効いてくれば、初年度から黒字化は狙える」と述べた。初年度売上高は現行水準の2兆円前後と見通した。

コンテナターミナルに停泊する日本郵船のコンテナ船(都内)
コンテナターミナルに停泊する日本郵船のコンテナ船(都内)
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  世界の輸出入品貨物を扱う定期コンテナ船業界では、中国などの景気減速で需要が低迷する中、大型コンテナ船の完成ラッシュも重なり、昨年の市況は歴史的水準まで冷え込んだ。こうした環境下で競合する海外の海運会社は規模拡大へ合従連衡に走ったが、それに乗り遅れた韓国の海運最大手が16年夏に破綻するなど経営環境は厳しさを増している。

  丸山専務は黒字化の可能性について、新会社が取り組む顧客側との来年の運賃交渉に加え、「コスト削減が最も重要になる」との認識を示した。削減の内訳については、ターミナル利用料や鉄道、トラック料金などが対象になると話した。

スケールメリット

  その上で丸山専務は、厳しさを増す世界の競争環境の中で生き残るには規模拡大も重要で、これが3社の事業統合の大きな目的でもあると指摘した。コンテナ船の積載能力は長さ20フィート(約6メートル)のコンテナを1単位=1TEUと表記するが、16年時点で日本郵船はコンテナ船の運航隻数は98隻、運航船腹量は約51万TEUだ。

  丸山氏は、スケールメリットで競争力のある運賃を提示してくる海外ライバルに対し、「3社統合で効率性に一層磨きをかけ、同時にスケールメリットも取りにいくためには海外のライバルとも十分競合できる100万TEU規模プレーヤーになる必要があった」と述べた。

  3社の事業統合による新会社の運航隻数は256隻、船腹量は138万TEUとなる見込み。シェアは世界規模では7%となり業界6位に浮上する。新会社には日本郵船が38%、商船三井と川崎汽船がそれぞれ31%を出資する。丸山専務は「シェア自体にこだわっているわけではない」として、当面は世界シェアや艦隊規模を大きくすることを狙って動くことはないと話した。

 野村證券の廣兼賢治シニアアナリストは、「3社統合により世界市場で戦いを勝ち抜くことは可能なのかは実際に結果をみるまで分からない。ただ個別に3社が挑むより確実に勝つ確率が上がった」と指摘する。その上で、統合効果による規模拡大で、荷下ろしなどの面でターミナルやトラックのコストが下げるのは間違いないとし、「もしダメなら別の方策を考えればよいだけ」と述べた。

  競争環境の変化でグローバル規模の業界再編は大きく進んでいる。コンテナ世界首位のデンマークのA・P・モラー・マースクはシェア16%、2位のスイスのMSCは14%とそれぞれ巨大だ。両社は3位の仏CMACGMを取り込んで世界3強のアライアンスを結成する動きもあったが、国が独禁法違反としてこの動きを認めなかったため、CMACGMは他社とアライアンスを結成。さらにCMACGMは、シンガポールのAPLも買収しシェアを11%とするなど規模拡大に努めている。廣兼氏は、運賃が下がり続ける限り「世界規模での業界再編は続く」との見方を示した。

「成長産業」

  外部環境は改善傾向にある。日本船主協会の工藤泰三会長(日本郵船会長)は22日の記者会見で、海運全般の市況は「ほぼ底離れしつつある」との認識を示した。その上で、コンテナ船運賃について「最悪期の前年よりはずいぶん良い。3社の合併効果が出るのは来年度で楽観視はできないが、統合決定が与えるインパクトは大きい」とコメントした。

  日本郵船の丸山専務は、コンテナ船事業は低迷が続いたものの、「間違いなく成長産業だと考えている」という。3社が持分法適用会社としてコンテナ船事業を継続する意義は大きく、新会社での意思決定は「出資比率にかかわりなくマジョリティーとしたい」と述べた。トップ人事もたすきがけなどでなく世界との勝負に重点を置くとしている。

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