日本銀行前理事の門間一夫氏は、黒田東彦総裁の来年4月の任期終了までの課題として、政策金利の誘導目標の見通しを公表すべきだと提案した。長短金利操作の下、誘導目標の引き上げに神経質になる市場との対話を円滑に進める狙いがある。

  門間氏は24日のインタビューで「日銀が適切なイールドカーブ(利回り曲線)水準をどう判断しているのか、もう少しイメージを持てるような情報発信が必要だ」と説明。市場の関心は長短金利操作に集中しており、説明が不十分なまま金利上昇の思惑が強まれば金利操作は難しくなると懸念を示した。日銀が経済・物価の見通しと整合的だと考える見通しを示せば「市場との議論が深まる」という。 

門間一夫氏
門間一夫氏
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  具体的には、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表するフェデラル・ファンド(FF)金利見通しを参考に、四半期の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)と長期金利(10年物国債金利)の誘導目標について見通しを公表することを挙げた。

  日銀を昨年5月末に退任し、現在はみずほ総合研究所のエグゼグティブエコノミストを務める門間氏は、金利見通しの公表のほか、高めになりがちな物価見通しの現実的な水準への見直し、金融緩和の出口で生じうる損失を含めた財務見通しの公表-の3点が必要だと指摘した。

誘導目標

  日銀は昨年9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の下で、長期金利目標を「0%程度」、短期金利を「マイナス0.1%」としている。原油価格反転や円安の影響で、物価上昇率が年内に1%に達するとの見方が強まり、エコノミストからは長期金利の誘導目標を黒田総裁の任期中に引き上げるという見方も出ていた。

  3月の金融政策決定会合の「主な意見」では、政策委員の1人が「長短金利操作の手順や政策反応関数について、今のうちから議論しておく必要がある」と指摘した。

  1月に公表された展望リポートによると、日銀の政策委員の消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の2017年度の見通しの中央値は前年比1.5%上昇だったが、門間氏は「非現実的」であり、民間の見通しである1%程度が「妥当な線ではないか」と述べた。

  門間氏は日銀のチーフエコノミスト的存在である調査統計局長を長年務めた。展望リポートの物価見通しは物価目標に沿った高めの数値になる傾向が強く、「市場と認識を共有しにくいという致命的な欠陥がある」という。市場の関心が今後の金利動向に移る中、「前提となる経済・物価の見方をなるべくバイアス(偏見)なく発信していくことは市場との対話の第一歩だ」との見方を示した。

日銀
日銀

複数シナリオ

  財務悪化のため、いずれ日銀が国債を買えなくなり長短金利操作ができなくなると懸念する市場参加者もいる中で、バランスシート(貸借対照表)の見通しについてもFRB同様に情報発信が必要だという。日銀が複数のシナリオを提示し、「損失は出るかもしれないが、とてつもなく巨額の損失が発生するのは極めてまれなケースだと説明することで、世の中で不安が広がるような議論を防ぐことにもつながる」と述べた。

  黒田総裁の任期終了まであと1年。市場では、次の日銀の一手は追加緩和ではなく国債買い入れ減額や金利引き上げなど出口方向になるとの見方が強いが、門間氏によれば、今年の利上げは難しく、来年の可能性も高くない。長期的にも「出口に行ける可能性は自明ではなく、むしろ2%になかなか行かず、政策の枠組みを考え直さなければならないということもあり得る」としている。

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