悪い合意でもした方がいい-EU離脱交渉に臨む英国に専門家らが示唆

  • 高まる交渉決裂の可能性、50%にも-調査グループ
  • 合意不成立なら英国の対EU貿易は3割減少へ-NIESR

悪い合意なら、しない方がまし-。欧州連合(EU)との離脱交渉に臨む英政府内で合言葉のように唱えられているのが、このスローガンだ。

  英国はEU向け輸出が年2300億ポンド(約32兆円)に上り、国内に330万人のEU国籍保持者を抱える。その交渉に背を向けていいのか。ジョンソン外相は「100%大丈夫」と言い、デービスEU離脱相は「恐れる」ことはまったくないと話す。

  だがアナリストは異を唱え、それがますます説得力を帯びている。2年間を期限とした離脱交渉が決裂すれば、費用や規制面でEUよりもはるかに英国が打撃を受けるとの見方だ。

  まずメイ首相が下院に交渉決裂を報告する緊急声明を発表する前からすでに、金融市場はこの影響を織り込みに行く。ノムラ・インターナショナルのストラテジスト、ジョーダン・ロチェスター氏(ロンドン在勤)は、ポンドが1ポンド=1.15ドルへと向かい、EU離脱選択後のポンド下落率が25%程度まで拡大すると予想する。

  一方、企業は長らく不透明性の「崖っぷち」と呼んできた混乱への緊急計画を発動させることになる。合意がなければ、英国は無関税で障害の少ないEUとの通商を放棄することになり、過渡的な期間が設けられるとの望みも消える。

  製造業には世界貿易機関(WTO)の協定に基づき平均約5%、自動車にはその2倍の関税がEUとの貿易に直ちに課せられる。農産物に対する関税は約40%にも上る可能性がある。英国がEUとの貿易に独自の関税を設定する場合、大半の業界の輸入コストは跳ね上がることになる。

  英国立経済社会研究所(NIESR)によると、これにより英国とEUとの貿易は30%前後落ち込む。

  これに金融街シティーの動向が加わる。ロンドンを拠点に欧州事業を続けることに希望を持っていたJPモルガン・チェースなどの銀行は人員や事業をEUやニューヨークに移す動きを加速させる公算が大きい。コンサルティング会社オリバー・ワイマンは最悪のシナリオで、ロンドンの金融サービス業界から7万人の職が失われると試算する。

  英政府の関係者は交渉決裂の確率を約30%と見込む。だが調査グループ「変化する欧州の中の英国」でディレクターを務めるアナンド・メノン氏は交渉期限終了時に合意が成立していない可能性を50%と予想、「メイ首相がどのように要求を全て通すつもりなのか、予測は極めて難しい」と語った。

原題:A Bad Brexit Deal May Be Better Than No Deal After All (1)(抜粋)

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