4月で民営化30周年を迎えるJR各社、このうち売上高、社員数、車両数で最大のJR東日本は、事業計画の柱の一つに国際化を掲げ、アジアや欧米で鉄道事業に取り組み始めている。海外市場での多様な事業参画で社員の意識を内向きから外向きに変え、同時に国際社会に通用する技術やサービスを習得して鉄道関連技術の革新につなげたい考えだ。

冨田哲郎社長
冨田哲郎社長
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  JR東日本の冨田哲郎社長はブルームバーグのインタビューで、国際展開は「将来の人材を育て、層を厚くするために必要」とし「運行やメンテナンスを海外で取り組むことで組織の活性化や社員が活躍する領域の拡大に努めたい」と述べた。

  日本の鉄道技術は世界的に安全性や品質などで信頼性が高い一方で、重厚な設備により割高などの批判もあり、海外では「精緻(せいち)さよりもコストを下げたり簡便なシステムが求められる側面もある」と指摘。さらに「内向きな会社と見られがちな企業風土を国際事業で変革したい」と述べた。

  経済産業省の資料によると、鉄道分野の世界市場規模は地球温暖化対策としての期待の高まりなどで、2005-07年の平均の15.9兆円から20年には22兆円に拡大することが見込まれる。冨田氏が12年の社長就任後から、新たな事業領域への挑戦として初めて国内外の企業と連携し積極的に海外事業に取り組んでいる。既にJR東日本が関与するいくつかのプロジェクトは実行段階に入っており、今後もその活動分野を拡大させる方針だ。

タイやインドで

  タイのバンコク都市鉄道路線パープルラインでは16年8月から丸紅東芝と共に鉄道メンテナンス事業の営業を開始。JR東日本の社員が現地採用社員を指導する形で保守整備などに従事している。子会社の総合車両製作所も車両を製造、納入した。また、インド政府が整備計画を発表したムンバイ~アーメダバード間の同国初の高速鉄道建設計画では、同社子会社の日本コンサルタンツが共同調査を受注している。

  海外事業ではインドの高速鉄道のほか、英国でロンドン~リバプール間のウェストミッドランド鉄道の運行権取得に向けて、オランダのアベリオ三井物産と3社で連携し応札している。米国ではサンフランシスコ~ロサンジェルス間のカリフォルニア高速鉄道建設計画、さらにシンガポール~クアラルンプール間の2国間を結ぶ高速鉄道計画の入札にも日本連合の一角として参画する意向を示している。

  冨田社長は、1987年の国鉄民営化から30年の節目を迎え「非効率でサービスが悪いと言われた国鉄時代から組織は大きく変革した」と話す。一方で、運行から線路設備、車両などのメンテナンスまで含め総合的に取り組めるのが日本の強みであるが「欧州メーカーは高い技術を持っており、中国も韓国も一定のレベルにある。決して日本だけが突出しているわけでもない」と慎重な見方を示した。

JR東日本の路線
JR東日本の路線
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  その上で、国策としてのインフラ輸出事業の一翼を担う役割分担を意識しつつ「それぞれの国の実情や要望に対し、技術を改良し汎用(はんよう)性を高めることが求められている」と述べた。

  さらに冨田社長は、国内での鉄道利用促進に関連して、訪日外国旅客対策を重点課題の一つに挙げる。20年の訪日旅客4000万人の目標を掲げ政府は観光立国に向けた取り組みを強化している。冨田社長は、東北地方や信越地方などへの外国人の訪問はまだ十分ではないと指摘。「これらの地域には日本の原風景が残っている」と述べ、アジア各国で現地旅行代理店と提携を強化しながら積極的に宣伝活動を展開すると語った。

  JR東日本は93年10月26日に東証1部市場に上場。公募価格38万円に対し初値は60万円だった。同社はその後1株を100株とする株式分割を実施。3月24日の株価終値は前日比0.8%高の9802円。

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