桜色の市場、日本経済に春風-チョコやビール、海外から花見も

  • 関連新商品で開発投資、個人消費を刺激-大和総研・長内氏
  • 21日に東京で桜の開花宣言、今年は例年より長く咲く可能性

桜の花が咲き始め、列島に春がやってきた。ほんのわずかな期間で散る花をめぐり、各社は関連商品を開発し、花見目的の訪日客は羽田空港に降り立つ。政府が消費の活性化や開発投資の増加に取り組む中、桜は日本経済に小さな春を呼び込んでいる。

  大和総研の長内智シニアエコノミストは「毎年、桜に関連した新商品が発売される中で、企業の開発行動が促され、それに伴い個人消費も刺激される」と桜の経済効果を説明する。さらに、桜が長く咲き続けている天候であれば旅行や外食が増え、「消費にもプラス」と分析した。

桜をあしらった商品

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  気象庁は21日、靖国神社(東京都千代田区)の桜の開花を確認し、全国の都道府県で今年初の開花を宣言した。東京が最初となるのは9年ぶりで、開花は平年よりも5日早い。気象予報士の長谷部愛さんは「桜の見頃は通常7-10日ほどだが、今年は3月末まで気温が低めに推移するので、例年よりも長く楽しめそう」と説明する。

  各社とも桜に関連付けた商品の開発、販売に力を注ぐ。雑貨店には桜をあしらった手紙や入浴剤が並び、喫茶店は桜風味のドリンクを提供する。国内のビール主要5社もコンビニ主要3社もすべて桜に関連した製品を販売している。

サクラサク

  キット、サクラサクよ-。ネスレ日本が販売するチョコレート菓子「キットカット」の標語は、2003年に受験生応援キャンペーンの一環として誕生した。標語を考えたネスレ日本の石橋昌文専務執行役員によると、大学の合格通知の電報に使われていた「サクラサク」という言葉から思い浮かんだという。元々、「きっと勝つと」という九州の方言と響きが似ていることから、キットカットは受験のお守りとして九州の消費者の間で広まっていた。

  今では、キットカットと「キット、サクラサクよ。」は受験時の風物詩として全国的に定着している。キャンペーンを開始する前と比べ受験期の売り上げは2倍に伸び、ネスレ日本が16年に行った調査では国内の半数が認識するまでになった。

季節限定のアサヒ・スーパードライ

Source: Asahi Breweries

   日本で最も売れているビール「アサヒスーパードライ」も、発売当初から約30年間親しまれてきた黒と銀を基調としたデザインを春限定で一新し、ピンク色に統一した桜のデザイン缶を発売している。アサヒグループホールディングスの広報担当、曽我拓生氏は「全部ピンクにするのは勇気がいった」と話すが、試みを開始した初年の15年は目標30万箱の倍以上となる62万箱を売り上げ、16年も目標40万箱に対して60万箱を販売した。

  3年目の17年は目標をより高い70万箱に設定したが、目標達成へ向け順調に売れているという。桜色を強調することで通常のスーパードライでは取り込めない若者や女性層も狙っており、曽我氏は「お花見に行く際に買ってほしい」と話す。

桜と富士山

  桜の開花が確認されると、桜で有名な観光地にはたくさんの人が訪れる。近年は海外からの花見客も増えている。

  「アジア圏を中心に桜を目的としたお客さまが増えている。SNSの発達で、お花見のような日本のより細かい文化が知られるようになった」と旅行代理店エイチ・アイ・エス経営企画室の宇佐美加奈氏は説明する。桜と富士山を一緒に見たいという希望も多く、関東を拠点に山梨や静岡まで足を伸ばす旅程が多い。「海外では花見を知らない人がまだまだいる。広報次第で今後もっと増える要素はある」と話した。

  日本政府観光局によると、16年4月の訪日客数は前年同期比18%増の208万人となり、単月としては当時の過去最高となった。桜シーズンによる訪日旅行需要の高まりが要因だったと分析している。16年全体で見ると、夏休みに重なる7月や中国の国慶節がある10月に次ぐ数字となった。

  訪日客数は12年以降増え続けており、16年は過去最高の2404万人を記録。訪日外国人旅行消費額(速報)も、前年比7.8%増の3兆7476億円と過去最高を更新した。政府は訪日外国人によるインバウンド消費を経済成長の核の一つに位置づけており、訪日観光客数を20年に4000万人、30年に6000万人とする目標を掲げている。

  みずほ総研の宮嶋貴之主任エコノミストは、桜目的のインバウンドは「買い物重視の『モノ消費』から経験重視の『コト消費』への流れとも合致する」と指摘。国内の人口が減少するなか、自国で四季を楽しめない東南アジア諸国を中心とした訪日外国人客を呼び込むことが重要だと語った。

  世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからましー。平安時代の歌人・在原業平は古今和歌集で詠んだ。キリンホールディングスのウェブサイトによると、「日本書紀」には812年に嵯峨天皇が花宴を催したという記述があり、花見は平安時代中頃には宮中での定例行事となったという。千数百年にわたって日本人が愛してきた花は、入学や入社など新たな旅立ちを祝う花でもある。

  上野恩賜公園(東京都台東区)で早咲きの桜を見上げていた野岸博さん(68)は、「桜が咲くと心が浮き立つ。入学や引退という人生の節目の思い出と重なっているから、普通の花とは違う」と語る。娘が小さいころにはよく桜のパンやお菓子をせがまれたと話し、自身も「桜を見るとお酒を飲みたくなる」と笑った。

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