アップルペイ、中国で苦戦-世界最大モバイル決済市場でライバル浸透

  • アリペイとウィーチャットペイの存在感が中国で目立つ
  • アップルペイの中国導入から1年、市場シェア獲得に苦しむ

中国・杭州市にあるKFCの店舗で、ドン・シミアオさんはある日曜日に商品を購入しようとしていた。中国ではよくある携帯電話での支払いを済ませようとしたところ、レジのスタッフにこう言われた。「アリペイ(支付宝)ですか、それとも微信支付(ウィーチャットペイ)でお支払いですか」。

  ここで問題が起きた。ドンさんは36元(約580円)の勘定をアップルペイで支払おうとしていたが、レジ係はこれまで一度もアップルペイで決済処理をしたことがなく、同店舗で使えるかどうかは分からないと答えた。「KFCの店舗で確実に使えることは分かっていたので、結局どのように決済を完了するのか一つ一つ教える羽目になった。こんな簡単に決済できるのかとレジ係は驚いていた」と中国人民大学で研究員を務めるドンさん(39)は振り返る。

アップルペイの表示

Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg

  アップルが中国でアップルペイを導入してから1年が経過した。中国の大手銀行や決済ネットワークの支持を得たにもかかわらず、市場シェアを獲得するのに苦労している。昨年のスマートフォン販売に占めるシェアが9.6%にとどまった「iPhone(アイフォーン)」の販売動向も一因だが、主な理由は消費者がアリババ・グループ・ホールディング系列のアリペイやテンセント・ホールディングスのウィーチャットペイの利用にずっと慣れていることだ。こうした決済手段は数年前から使用でき、アイフォーンを含む全てのモバイル機器で使うことができる。

  モーニングスター・インベストメント・サービスのアナリスト、マリー・スン氏は「アップルペイが予見可能な将来にわたりアリペイやウィーチャットペイと同等の市場シェアを得ることができるとは考えていない」と説明。「チャンスが唯一あるとすれば中国のライバル企業に大きなセキュリティー障害が発生し、顧客が代替手段を求めるという場合だけだ」と話した。

  アップルの広報担当者、呉青穎氏は電子メールでコメントを控えた。直近の通期決算では大中華圏の売上高が17%減となったが、ティム・クック最高経営責任者(CEO)は昨年10月、中国について非常に強気な姿勢を示していた。

2つのギャップ

  アップルペイが成功する見込みがそれなりにある国があるとすれば、それは中国かもしれない。TNSグローバルによれば、コネクテッド消費者の40%は週間ベースでモバイル端末を使って支払いをしており、中国は世界トップの市場だ。

  アリペイやウィーチャットペイはコードのスキャンや直接オンラインなどを通じて使うことができ、販売店にとっては設置が比較的容易で割安な選択肢となっている。これらの決済手段は相互で送金し合ったり、外食の勘定を割り勘したりできるように設計されており、こうしたアプリは現金により近いものになっている。

  ドンさんは「現在の状況を変えるのは非常に難しい。全く不可能というわけではないが、非常に困難だ」と話した上で、「アップルは2つのギャップを埋める必要がある。一つは規模が小さめの都市を中心にアップルペイが使える販売店を中国で増やすこと。もう一つはそれを選ぶ消費者を増やすことだ。いずれもコストと時間はかかる」と指摘した。

原題:Apple Pay Gets Crushed in World’s Biggest Mobile-Payments Market(抜粋)

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