米金融当局が15日に行ったのは、過去10年余りで3回目となる利上げだけではない。緩やかな政策転換に向けて重要な一歩を刻んだのだ。

  私がかねて政策金利の「素晴らしい正常化」と呼んだものを希求して、米金融当局は厳格なデータ次第のスタンスを踏み越え、市場に追随するよりも市場をリードすることに一段と安心感を抱くようになった。戦術的色彩を弱め戦略的となるプロセスで、金融当局は経済政策に責任を持つ他の当事者にもっとスポットライトを照らすことになるだろうし、実際にそうすべきだ。こうした他の当事者には、財政や通商、労働市場、規制問題を担当する米国の政策立案当局に加え、金融システム上重要な他国・地域の中央銀行、とりわけ日本銀行と欧州中央銀行(ECB)が含まれる。

  数週間後に公表される連邦公開市場委員会(FOMC)議事録を待たねばならないが、15日の米利上げと政策転換の論拠は2日間の会合後に発表された声明で明らかだ。それはさらに、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長による記者会見で補強され、経済見通しとリスクバランスに影響を及ぼす国内および国際的な諸要因に言及するものだ。

  緩やかなペースでの米景気拡大が続く中、金融当局は企業のセンチメント向上を指摘するとともに、労働市場の一層の改善に歓迎の意を示した。当局者はこのほか、インフレ率がFOMCの長期的な目標である2%に向けて上昇しつつある点に安堵(あんど)した。こうした国内要因に伴う形で、海外動向に絡んだ米経済への潜在的な逆風への懸念は後退したと見受けられる。

  「ドット・プロット」として知られるFOMC参加者の金利分布予測図に反映された年内の利上げ回数の見通しはあと2回、2018年は計3回である点が再確認された。当局者はまた、バランスシート管理の変更に関する詳細な検討を先送りし、巨額に上る米国債と資産担保証券(ABS)のポートフォリオを保有し続ける方針を示唆した。

  最近の市場のコメントを見ると、これらはいずれもおおむね予想されていたことだ。今回のFOMCで利上げが決まる公算が強まっているとの見通しを向けて、市場では急速に修正が進んだ。2週間ほど前に市場が織り込んでいた3月利上げの確率は30%しかなく、この状況に直面した当局者は協調的とも受け止められるやり方で同確率を3倍強に押し上げた。それはまさに見事なほどに素早く、秩序だったものだった。

  FOMC参加者の経済予測やそれに関連した金利の将来の道筋にはまだ反映されていないものの、税制改革、規制緩和、インフラ投資の3本柱から成るトランプ米大統領の成長促進策が持続的な政策に転換されていくか、金融当局はその進展を注視している。トランプ政権と議会が政策実現にこぎ着ければ、金融当局はまずリスクバランスを一段とタカ派的なものに傾け、その上で利上げペースを加速させるだろう。

  米金融当局はあまりにも長期間、孤軍奮闘してきた。幸いなことに今や、秩序だった政策正常化の機会が訪れた。だがそれは単独で歩むことのできる道筋ではない。金融当局には、米経済および世界経済全体と共に、他の政策立案当局が乗り出して、目の前にある課題に適した手段を活用することが必要だ。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:Fed Delivers a Hike and a Subtle Message: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE