日本銀行は金融政策決定会合で、昨年9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を決定した。米連邦公開市場委会(FOMC)は追加利上げを決定したが、黒田東彦総裁は会合後の記者会見で、米国の利上げは国内金利の引き上げに「直接的な影響はない」との認識を示した。

  金融調節方針は、誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いたほか、長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持した。

  この日の決定会合では、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も据え置いた。前会合に続き木内登英、佐藤健裕両審議委員が長短金利操作等の金融調節方針に反対した。

  日銀は「緩やかな回復基調を続けている」との景気判断は据え置いたが、住宅投資は「横ばい圏内の動き」として、前月の「持ち直しを続けている」から下方修正した。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は小幅のプラスに転じた後、「2%に向けて上昇率を高めていく」との判断を据え置いた。

 木内委員は「小幅のプラスに転じた後、かなり緩やかに上昇率を高めていく」との独自案を提出したが、1対9の反対多数で否決された。

長短金利操作は十分機能

  日本時間の15日未明に開かれた米連邦公開市場委会(FOMC)はフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25ポイント引き上げ、0.75-1%のレンジに設定。昨年12月以来3カ月ぶりの利上げに踏み切った。

  黒田総裁の任期中の追加緩和観測が消えつつある一方で、年内にも長期金利の誘導目標を引き上げるとの見方が出ている。黒田総裁は記者会見で「長短金利操作は十分機能しており、今後も機能していく」と述べた上で、「米国が利上げしても機械的に日本も利上げするわけではない」と強調した。

  また、日米の金利差が為替に与える影響については「為替は金利格差だけではなくいろいろな要素で動く」と述べた。

  原油価格の反転や円安の影響で、物価上昇率が年内に1%に達するとの見方が強まっているが、日銀は物価の基調が着実に目標の2%に向かうかどうか見極める考え。ブルームバーグがエコノミスト41人を対象に6-9日に実施した調査では、回答したエコノミスト全員が金融政策の現状維持を予想していた。

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  大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは会合終了後、ブルームバーグの取材に対し「景気判断もリスク認識も変わっていない中で、政策を動かす理由もないと言うことだ」と述べた上で、「市場の見方では日銀のインフレ見通しはまだ楽観的なので、どこかで下方修正という可能性は残る」との見方を示した。

13カ月ぶりプラス

  1月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、エネルギーの下落幅縮小により前年比0.1%上昇となり、2015年12月以来13カ月ぶりにプラスに転じた。ブルームバーグの調査では、黒田総裁の任期の2018年4月までに長期金利の誘導目標を引き上げるとの予想は14人(34%)と3分の1を占めた。

  これに対し、黒田総裁は16日の会見で「石油価格の動きは足元で物価を押し上げる方向に働く」と述べる一方で、「物価1%でも機械的に長期金利を上げる考えはとっていない」と指摘。長期金利操作目標には「0%程度と言っているように一定の幅がある」との認識も示した。

  佐藤審議委員は1日の徳島市での会見で、コアCPIが年末にかけて1%に届き、長期金利の0%維持が困難になる可能性があるとして、「10年金利目標を微調整することは十分あってしかるべきではないか」と述べていた。

  早期の長期金利引き上げには懐疑的な見方も根強い。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは会合終了後の取材で、「インフレ率はまだゼロだし、先行きも2%に近づいていくかどうか日銀も自信が持てない」とし、引き締めができる状況ではないと指摘。10年金利目標の引き上げについては「今年はないだろう」と予想した。

  複数の関係者によると、日銀は物価上昇率が上がり始めた段階で、長期金利を引き上げの条件を示したガイダンス(指針)を明らかにするかどうか検討している。物価の基調が着実に上昇していることが確認できる前に長期金利引き上げ観測が高まることへの懸念が背景にある。

  ドル円相場は会合結果の発表前は1ドル=113円近辺で取引されていたドル円相場は、日本時間午後6時すぎもほぼ同水準で推移している。決定会合の「主な意見」は3月27日、「議事要旨」は5月2日に公表する。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。

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