日本の小型株は箱入り娘だ、還元力に海外勢執心-世界リスク希薄

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  • 2部・マザーズ・ジャスダック売買代金が右肩上がり、1部は減退
  • 過去10年の小型株の配当伸びは5.5%、大型株の4%をしのぐ

海外投資家が日本の小型株探しにご執心だ。配当や自社株買いなど株主還元力の高さが評価されているほか、欧米の政治動向や地政学リスクなどに揺れる世界の株式・金融市場への感応度が大型株に比べ小さい、との判断もある。

  東京証券取引所のデータによると、2016年以降の東証2部とマザーズ、ジャスダック市場の海外投資家の買い金額、売り金額の合計は2月3週(13ー17日)に5845億円と8カ月ぶりの高水準となった。3月に入っても5000億円台を維持。創薬ベンチャーのそーせいグループが人気化した影響で昨年4月に8000億円台に急拡大した後は反落、9月の1908億円を底に現状は増加傾向だ。

海外勢の小型、新興市場銘柄の売買意欲推移

Created by Bloomberg

  一方、東証1部の海外勢は昨年2月の22兆9518億円を天井とし、その後は停滞。米国の財政出動政策やインフラ投資期待が盛り上がった11ー12月のトランプラリーで20兆円近くに急回復したが、直近は14兆円台となっている。また、TOPIXの時価総額・流動性別指数で最上位のコア30と最下位のスモールの売買高(1日平均)を比較すると、年初来のスモールは昨年1年間に比べ0.03%の減少にとどまった半面、コア30は3割減った。

東証1部銘柄の海外勢の売買意欲推移

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  指数連動型上場投資信託(ETF)の運用会社である米ウィズダムツリー・インベストメンツ日本法人のイェスパー・コール最高経営責任者(CEO)は、「日本の小型株は『箱入り娘』『隠れた宝石』だ。株主還元の高さには驚いている」と指摘。日本の中小企業は不動産などを持たない場合、資金調達をしにくい事情があり、「結果として大型株よりも資本をマネージメントするのがとてもうまい」との見方を示した。

  ウィズダムツリーによると、昨年までの過去10年で小型株(MSCIジャパン小型株指数)の配当は5.5%伸び、トータルリターンは3.2%だった。大型株(MSCIジャパン指数)の配当の伸びは4%、トータルリターンは0.5%。コール氏は、「小型株では創業者と経営者が同じことが多く、経営者や経営者の家族が株式を多く保有している。結果として、自然に株主と経営者が同じ立場で考えることになりやすい」と分析。配当と自社株買いが増加する傾向は、「少なくとも東京五輪までは続く」と予想する。

株主還元総額は16兆4000億円

  日本企業の潤沢なキャッシュフローに安倍政権が主導したコーポレートガバナンス(企業統治)改革が加わり、モルガン・スタンレーの調査では昨年の自社株買いと配当を合わせた株主還元総額は16兆4000億円に達した。株主を意識した経営への転換で配当性向が拡大、継続的な自社株買いのほか、取締役会に占める社外取締役比率も拡大しており、着実なガバナンス改善を評価する同社では日本株の投資判断を「オーバーウエート」としている。

  英プルーデンシャルグループのイーストスプリング・インベストメンツのファンドマネジャーで、約20年の日本株運用経験を持つマックス・ゴドウィン氏(シンガポール在勤)も日本企業は「事業の収益性や余剰資金の効率的な配分など、ROEを意識した経営へと徐々に変わりつつある」と指摘。今は過渡期で、「ガバナンスが改善した企業と改善途中の段階にある企業と両方存在する。われわれは改善方向にある会社を探しており、投資のチャンスはまだまだある」とみる。

  日本の大型株には時価総額の大きい輸出株が多く、世界経済の動向や為替変動の影響を受けやすい。ドル・円相場とMSCIジャパン指数の相関関係を示す数値(30日相関)は、0.5と2月3日に昨年8月以来の高水準となった。直近はゼロ近辺で推移、同数値は1に近づくほど連動性が強いことを示す。一方、為替とMSCIジャパン小型株との相関数値は昨年8月以降、マイナスで推移し、2日には昨年10月以来の低水準を付けた。

マクロ予測は困難、企業見極めに注力

  ゴドウィン氏は、「マクロを予測するのは難しく、われわれの投資判断に影響を及ぼすものではない。為替を予想するよりも、バリュエーションが割安な銘柄の中からその企業が本来持つ中長期的な収益力の分析に取り組んでいる」と言う。

  ウィズダムのコール氏は、小型株に注目するポイントとして国内の景気回復の恩恵を受けやすい特性にも言及。「大型株の売り上げの50%以上は海外だが、小型株の70%以上は国内」とし、国内は「デフレ脱却の時期が近づいている。景気見通しに強気」と述べた。インフレによる世帯収入の好転と需要の強さは経済成長の準備が整っているということで、「増益モメンタムと国内中小型株の利益見通しは17ー18年を通して向上していく」と予測した。

  「ウィズダムツリー日本小型株配当ファンド」の運用成績は09年2月を底に上昇基調にあり、1年間のリターンは25%と日経平均株価の15%をアウトパフォームした。組み入れ上位にはSBIホールディングスベネッセホールディングス松井証券など内需関連銘柄のほか、三菱ガス化学SUMCO横浜ゴムDICが並ぶ。また、「イーストスプリング中小型バリュー株厳選ファンド」の1年間リターンは29%だった。

  ドルの上値が重い為替動向や国内の政治問題リスクが懸念された17日の日本株市場では、コア30指数が一時0.6%下げたのに対し、スモール指数は0.4%安にとどまった。

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