日銀会合注目点:米利上げに黒田総裁見解は-市場は現状維持見込む

  • 事前調査では3分の1が総裁任期中の長期金利上げ予想
  • 日銀は利上げ前のガイドライン、誘導目標のレンジ化を検討-関係者

日本銀行は16日の金融政策決定会合で政策運営方針を決定する。米連邦公開市場委会(FOMC)は追加利上げを決定したが、日銀は現状維持が見込まれている。物価上昇期待から早期の長期金利引き上げ観測も浮上しており、黒田東彦総裁が会合後の会見でどのような見解を示すかに市場の関心は集まっている。

  ブルームバーグがエコノミスト41人を対象に6-9日に実施した調査では、全員が現状維持を予想。追加緩和期待は大きく後退しており、黒田総裁の任期の2018年4月まで追加緩和はないとの見方が38人(93%)と大半を占めた。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは13日付のリポートで、為替相場の水準や政治スケジュールなどを考えると、「政策変更は当面予想されない」と分析。黒田総裁は記者会見で「景気・物価で強気の見通しを示しつつも、時期尚早の金融引き締めに動くつもりはないことを再度確認するだろう」としている。

  金融政策決定会合は従来おおむね正午から午後1時の間に終了し、それから間もなく結果が発表される。黒田総裁は午後3時半に記者会見を行う。今会合の注目点は以下の通り。

米国の利上げ

  日本時間の15日未明に開かれたFOMCはフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0.25ポイント引き上げ、0.75-1%のレンジに設定。昨年12月以来3カ月ぶりの利上げに踏み切った。声明ではインフレ率が目標に近づいているため警戒を強めていることを示唆したが、参加者の予測中央値は年内あと2度の追加利上げを想定しており、前回と変わらなかった。

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  中曽宏副総裁は2月9日の講演で、市場の一部には海外金利が上昇していることを受けて日銀が近い将来、長期金利操作目標の引き上げを検討するとの見方もあるとした上で、2%の物価目標の実現には「なお距離がある」と説明。経済・物価見通しには「引き続き下振れリスクが大きい」とし、現在の金融緩和策を「粘り強く推進していくことが何よりも重要だ」と述べた。

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは9日付のリポートで、トランプ米政権の財政政策はドル高に作用し、「金融政策も金利差などの観点からドル高につながる」と記載した。世界経済持ち直しとドル高円安が輸出拡大を促し、円安でインフレ率も押し上げられるとした上で、日銀にとって「待てば海路の日和あり」と言える状況だろうとしている。

注目の総裁会見

  JPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは9日付のリポートで、今回の金融政策決定会合では「政策変更は考え難い」としながらも、「今後、物価が徐々に上昇していくことが展望される中で、黒田総裁の発言が注目される」としている。

  複数の関係者によると、日銀は時期尚早の長期金利引き上げ観測が高まるのを避けるため、物価上昇率が上昇し始めた段階で、長期金利を引き上げるための条件を示したガイダンス(指針)を明らかにするかどうか検討している。物価の基調が着実に上昇していることが確認できる前に長期金利引き上げ観測が高まることへの懸念が背景にある。

  また、複数の関係者によると、日銀は将来的に、長期金利の誘導目標の引き上げや何らかのショックで市場が混乱した際、誘導目標に一定の幅(レンジ)を持たせることを検討している。日銀は現在の市場環境では長短金利操作の継続に自信を持っており、レンジ化は指し値オペや長期の固定金利の資金供給オペなど現時点で持つ手段で市場の混乱を抑えられない場合の選択肢となる。

長期金利の引き上げ観測

  1月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)はエネルギーの下落幅縮小を受けて、前年比0.1%上昇と2015年12月以来13カ月ぶりにプラスに転じた。ブルームバーグの調査では、黒田総裁の任期の2018年4月までに長期金利の誘導目標を引き上げるとの予想は14人(34%)と3分の1を占めた。

  佐藤健裕審議委員は1日の徳島市での会見で、コアCPIが年末にかけて1%に届き、長期金利の0%維持が困難になる可能性があるとして、「10年金利目標を微調整することは十分あってしかるべきではないか」と述べた。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は、日銀が9月に10年金利目標を0.1%程度に引き上げる可能性があるとみる。背景として、原油価格上昇や人手不足、切手など公共料金の値上げなどで、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)が年末1%台半ばに届く可能性を挙げる。

利上げ懐疑論も

  一方で、たとえコアCPIが1%に達しても、日銀が長期金利の誘導目標を引き上げるのは容易ではないとの見方も根強い。

  シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「日銀が10年金利目標を微調整することで、日銀が柔軟に目標の変更を行うとの見方が市場参加者の間で強まれば、それ自体がイールドカーブコントロールを難しくする可能性が高い」と指摘する。大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストも「年後半にかけ物価は上昇する見込みだが、エネルギー価格の反転が主因であり、長期金利誘導目標の微調整は正当化し難い」とみる。

金融市場調節

  日銀が1月末に中期ゾーンの国債買い入れオペの回数を減らしたこともあり、10年物国債金利は2月3日に0.15%と約1年ぶりの水準に急騰するなど不安定化した。だが2月末にオペ日程を事前に公表したことを受けて、市場は落ち着きを取り戻している。

  大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストはブルームバーグの調査で、日程の公表によってオペ実施の有無をめぐる市場の不透明感が後退すると評価。将来的に長期金利を0%に固定することが困難になれば、「誘導目標に一定の幅を持たせるなど、より柔軟な対応を取ることで、金融政策が市場に与える影響を最小化するような手法を検討する必要がある」としている。

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