米金融当局が検討するバランシート縮小の進め方-Q&A

米金融当局は先の金融危機の際、経済を大惨事の瀬戸際から救うため、多額の米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を買い入れた。量的緩和(QE)として知られるこの救済策は、長期金利を低く保つことで経済成長を促すのが狙いだったが、連邦準備制度のバランスシート上の資産は前代未聞の4兆5000億ドル(約517兆円)に膨らんだ。2014年に当局はQEを打ち止めにしたが、経済が順調さを取り戻して準備が確かなものとなるまで、あえてバランスシートの縮小を控えることにした。そして今、当局が短期金利を正常な方向に押し上げつつある中で、縮小開始の時期が近づいている。その場合、恐らく広くシグナルが発せられることになりそうだが、混乱がないことを意味しない。

1.どんな効果をもたらしたか?

  4兆5000億ドルものバランスシートは、米国の国内総生産(GDP)の約4分の1に相当する。米金融当局が財務省証券やMBSの利回りを低めに抑えていることで、米政府による財政赤字のファイナンスや住宅購入者がローンを組む負担は割安となった。ドル建てで借り入れる中国をはじめとする新興市場企業の資金調達コストも押し下げられた。また、金融市場にも大きな意味を持つ。財務省証券は金融当局の買い入れで割高となり、代わりに株式購入を投資家に促す結果となった。09年以降の株価の大幅上昇に当局が一役買った格好だ。

2.心配される問題点は?

  バランスシートの縮小は引き締めのもう一つの方法だ。一部アナリストは短期金利引き上げよりも大きな影響を米経済や世界経済に及ぼす可能性があると指摘する。経済や金融市場の重要な支えを取り除くことにならないかという不安だ。

3.縮小の前例はあるのか?

  答えはノーであり、投資家や資金の借り手が何を想定すべきか分からない理由もそこにある。だが、展望はあまり明るくないかもしれない。13年5月にバーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長(当時)が、当局として債券購入の規模縮小を検討していることを示唆しただけで、金融市場には動揺が広がった。その後の長期金利上昇は米住宅業界や新興市場に強い打撃を与えた。衝撃があまりに大きかったので、この事態は金融市場でQE縮小に伴うかんしゃくを意味する「テーパータントラム」と呼ばれることになった。

4.縮小はいつ始まるのか?

  何カ月も先だろう。イエレンFRB議長は、経済が堅調な軌道にあり、もはや大掛かりな支援を必要としないと確信できるようになるまで、金融当局として縮小に着手すべきではないとしている。さらにイエレン議長はバランスシートについて行動を起こす前の段階で、短期金利をゼロから一段と引き上げたい意向だ。バーナンキ氏は今月、来年初めまではそれらの要件が満たされることはないとの見通しを投資家に示した。しかし、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、主要政策金利が1%に達すれば、縮小について真剣に検討すべきだと主張。1%到達は間もなく訪れる可能性がある。

5.リスクがあるのになぜ縮小を検討するのか?

  米金融当局者の一部は、大規模な債券保有が金融市場にゆがみを引き起こし、投資家に妥当なレベルを上回るリスクテークを促していると懸念している。当局がMBSをポートフォリオに抱え続けることで、経済の他の部分よりも住宅業界を優遇する事態となっていると心配する声も上がっている。ただ、行動に向けた暗黙の理由の一つは政治的なものだ。共和党議員は金融当局のQEプログラムに非常に批判的であり、オバマ政権が多額の財政赤字を計上するのを容易にしていると非難してきた。バランスシートを減らせば、こうした批判の一部をかわし、金融当局の政治的独立性を守ることになると当局者は期待している。

6.衝撃を最小限に抑えることはできるか?

  金融当局はそう望んでいる。まず、投資家に適応のための時間を与えるため、縮小開始よりずっと前の段階で戦略を発表する公算が大きい。第2にMBSは全く売却せず、住宅市場への影響も限定的となろう。第3に少なくとも最初は、保有する財務省証券の売却を回避し、償還金を再投資しないことでポートフォリオを縮小させていくと考えられる。

7.縮小にはどのくらいかかりそうか?

  バーナンキ氏は、全プロセスに5-7年要する可能性があるとみており、縮小の影響はさらに抑制されそうだ。この手法について一つ心配なのは、金融当局の米国債ポートフォリオのほぼ3分の1、約7850億ドル相当が18、19年に償還期限を迎える点だ。新たなFRB議長の下で、戦略が変わる可能性ももちろんある。イエレン議長の4年の任期は18年2月までで、トランプ大統領はイエレン氏に続投を求めないと広く予想されている。

8.金融当局のポートフォリオの中身は何か?

  米金融当局は2兆5000億ドル相当の財務省証券を保有し、これは一般が保有する米国債残高の約15%を占める。MBS保有は約1兆7000億ドルと、市場全体の4分の1余りに相当する。残りの資産は外国の中央銀行とのスワップや証券の翌日物ローン、外貨で構成される。

題:Federal Reserve Ponders How To Do The Big Unwind: QuickTake Q&A(抜粋)

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