ミラボー・アジア(香港)のトレーディング担当ディレクター、アンドルー・クラーク氏は日本銀行の金融政策決定会合当日、花柄のカフスボタンを身に付ける。ジンクスもあり、「たくさんのビジネスが舞い込んでくる気がする」ためだ。日銀の政策判断はかつて、株式トレーダーらの注目の的だった。

  世界を驚かせた異次元金融緩和の発動からまもなく4年、今や日銀に対する市場の期待や注目度は低下している。日本を含む世界経済が改善方向に向かう中、一段の金融緩和が行われる可能性が低い半面、すぐに緩和縮小(テーパリング)へ向かうほど国内の実体経済は強くなく、政策と経済情勢が均衡状態にある。「何か予期せぬことが起こった方がパニック的な売買があるので良い」と縁起を担ぐクラーク氏の思惑は、成就しにくい現状だ。

日本銀行
日本銀行
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  デフレ脱却を公約に政権へ返り咲いた安倍晋三首相の意向を汲み、2013年3月に黒田東彦日銀総裁が就任、4月4日の会合で後に「黒田バズーカ」と呼ばれる量的・質的緩和策の導入を決めた。為替の円安進行も誘発し、脱デフレ期待の高まりで日経平均株価は会合当日を含む3日間で800円以上上昇。14年10月31日に追加緩和に踏み切った際は、期待感から会合前々日から5営業日続伸し、この間1600円上げた。

  クレディ・スイス証券の株式営業部ディレクター、ステファン・ウォラル氏はこの5年間の「『日銀デー』は素晴らしかった」と振り返る。一方で、日銀への期待感がエスカレートした結果、「何かクレイジーなものでないと、市場は罰を与えるようになった」と言う。その象徴例がマイナス金利政策だった。

  16年1月28ー29日の会合で、金融機関が保有する日銀当座預金にマイナス0.1%の金利を適用する政策の導入を決定。当初2営業日の日経平均は800円以上上げたものの、銀行など金融機関の業績に悪影響が及ぶとの見方が強まると、2月2日から12日までの間に2912円も下げた。

  ウォラル氏の元には会合から1週間ほど、マイナス金利の意味を理解しようとする顧客からの電話が鳴りやまず、「誰もその意味を理解できていないようだった。私には、日銀はコントロールを失っているように見えた」と話す。日銀は同年9月、新たな枠組みとして長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を導入し、政策の軌道修正を図ることになる。

  ピクテ投信投資顧問の松元浩常務執行役員によると、グローバルに投資戦略を議論する同社のテレビ会議では「日銀の話題が間違いなく減っている。問い合わせがあるのは、黒田総裁の任期や後任人事に関することばかり」だ。日本経済は緩やかながら持ち直しの機運が高まっており、「日銀は特に動く必要はない」ともみている。

  SMBC日興証券の山田誠エクイティ部長は、「投資家と話しても、あまり日銀の話にはならない。それよりトランプ米大統領の政策に意識がいっている」とし、日銀の話が出ても「いつテーパリングするのかという話題だ。緩和について話していたこれまでとは逆方向」と言う。

  日本株はTOPIXと日経平均が15年12月以来の高値を回復する中、米国は年内複数回の利上げが確実視され、欧州でも量的緩和の出口戦略が話題になり始めた。山田氏は、日本でも日銀が「テーパリングをそれほど先ではない時期にする必要性が出てくる、という見方が上がってきている」と指摘。ただし、今回会合では「大義名分が足りない。何もしない」と予想している。

  15ー16日開催の日銀会合についてブルームバーグが行った事前調査では、エコノミスト41人全員が政策の現状維持を予測した。緩和予想派が皆無の状況は、昨年12月会合前の調査以降、3回連続。2018年4月までの黒田東彦総裁の任期中に追加緩和はないとみる向きは38人(93%)と、前回調査(88%)を上回った。

  生鮮食品を除く1月の全国コア消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.1%上昇とプラスに転換しており、野村証券ではインフレ率持ち直しのモメンタムを見極めるため、日銀は様子見姿勢を続けるとみる。BNPパリバ証券は、現在の枠組みでは日銀が政策のバイアスを示唆することができず、物価目標の達成に向けたモメンタムを維持するため、粘り強い緩和を継続というメッセージが繰り返されると予測した。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE