邦銀3メガ:英国離脱前に欧州で体制整備-相次ぐ選挙動向を注視

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  • MUFGとみずほはオランダを拠点化、三井住友は欧州で資産拡大
  • 証券営業「パスポート」を英国以外で取得-ダブリンなどが候補地

3月15日、オランダの総選挙が行われる。とりわけこの選挙結果に注目するのは邦銀3メガグループだ。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の動きを見据えて新たな体制整備を進める中、今年は欧州各地で大型選挙が予定されており、英国に刺激を受けた政党が台頭する不確実性が高まっている。選挙結果次第では新たな対応が迫られる可能性がある。

  三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)やみずほフィナンシャルグループ三井住友フィナンシャルグループが欧州で展開する人員は合計6800人。このうちロンドンには合計約4500人が勤務し、各社ともに欧州に中東やアフリカを加えた地域の統括本部としての機能を持つ。3グループは現地に進出した日本企業だけでなく、世界の優良企業との取引拡大を狙って海外業務の強化を進めている。

  こうした中、MUFGとみずほFGは、オランダ現地法人を改称して英国を除く欧州大陸の営業拠点網を集約する体制に移行した。ともに事務部門の効率化、オフィス賃料などのコスト削減を図るとともに営業を強化する考え。EU内で自由に金融事業を展開できる「パスポート」はオランダで取得しており、これで英国のEU離脱後も対応可能となっている。ただ、ともにロンドンが欧州本部であることに変わりはない。

  メディオバンカの銀行アナリスト、ロビン・バンデンブロエック氏(ロンドン駐在)はオランダについて「当面は十分なオフィススペースがあるし、言葉の面でも生活の質の面でもいいのではないか」と話す。同国総選挙については、反欧州連合(EU)を掲げる極右政党・自由党(PVV)が議席数を伸ばしたとしても、連立政権を組むパートナーを見つけられないだろうとの見方を示した。

  I&Oリサーチが実施した投票前最後の世論調査によると、PVVの獲得議席は150議席中16にとどまる見通し。13日公表された前回調査結果を4議席下回った。昨年12月には獲得議席が33に達するとの結果もあった。ルッテ首相の与党、自由民主党(VVD)の予想獲得議席数は今回の調査結果で3議席増え、27議席。  

  MUFGは欧州13カ国に従業員3000人を配置。三菱東京UFJ銀行国際企画部の溝口直樹次長によると、欧州大陸の体制整備は英国の離脱決定前から着手していたという。オランダを拠点とした新営業体制は、昨年のベルギーなどの3拠点に続き、17年度中にドイツやスペイン、ポルトガルなどの11拠点も傘下に置く予定。残るフランスやイタリアについては検討中だ。

政治リスク上昇

  みずほFGは、欧州では銀行や証券など合計15拠点に合計1800人を抱える。みずほ銀は1月にオランダ現法を「欧州みずほ銀行」に名称変更して、ベルギーやオーストリア、スペインなどの拠点を傘下に置いて営業を統括する体制とした。みずほ銀グローバルコーポレート業務部の大石健二郎参事役は、国際企業との取引強化の中で「欧州は非日系を中心に貸出残高が拡大中」という。

  欧州では今年、大型選挙が相次ぐ。MUFGやみずほFGが欧州大陸の拠点と位置付けたオランダの総選挙ではEU加盟の継続も争点の一つとされている。このほか、フランスは大統領選挙と議会選挙、ドイツは秋に総選挙、来年はイタリア、スウェーデンでも議会選挙がある。大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストは「欧州の政治リスクは上昇している」と指摘する。

  現在、3グループともに証券部門については英国の「パスポート」を使って欧州で営業している。今後の英国のEU離脱の仕方によっては体制の見直しが迫られる状況だ。みずほ銀の大石参事役は、銀行とグループ証券会社が連携する大型買収案件では、ローンからエクイティや社債の発行まで取引拡大を進めていく中で「証券機能は切り離せない」と語る。

証券部門のパスポート

  証券部門のパスポート問題に対して、MUFGの溝口次長は「いろいろ検討している」と述べ、今後の英国のEU離脱交渉を見守りながら対応を考えていく方針。みずほFGは1月に佐藤康博社長が証券部門の英国以外でのパスポート取得に向けて「何カ所かでスタディーしている」ことを明らかにし、アムステルダムやダブリンなどを候補として挙げた。みずほ銀の大石参事役は、3月中にも方向感が示されるとの見通しを示した。

  三井住友Fは欧州に約2000人を配し、安定収益の確保を目指して海外資産の拡大に力を入れている。これまでにアイルランドを核とした航空機リース事業を買収し、機体保有数は世界第3位に躍進。同じ欧州では米ゼネラル・エレクトリック(GE)からプライベートエクイティ向け債権約22億ドル分を買収し、一気に非日系中堅企業約100社との取引を獲得した。三井住友銀行国際統括部の毛利憲一郎グループ長は、欧州各地で取引を分散させていることから、「ブレグジットによる短期的な影響はほとんどない」とみる。

  全国銀行協会の国部毅会長(三井住友銀頭取)は2月、英メイ首相がEU単一市場からの脱退を表明したことを受けて「単一パスポート制度が維持されない可能性が高くなってきた」とし、今後の影響を見極めていく考えを示した。その上で、個別行として今後も安定的に金融サービスを提供していくため、「EU加盟国に新たな現法を設立するなど将来の業務運営体制についてあらゆる可能性を柔軟に検討していきたい」との考えを示している。

最大3万人のリスク

  ブリュッセルを拠点とするシンクタンクのブリューゲルは2月に公表したリポートで、ロンドンに拠点を置くグローバルバンクが英国のEU離脱後に1兆8000億ユーロ(約216兆円)相当の銀行資産を欧州大陸に移転し、最大3万人の雇用が失われるリスクがあると予想した。人員異動について、HSBCホールディングスのスチュアート・ガリバーCEOは、ロンドンを拠点とする投資銀行部門の行員5000人のうち1000人をパリに異動させる計画を示している。

  MUFG、みずほFG、三井住友Fは、欧州は海外業務の重要地域であり、英国についてもブレグジットがあっても継続して注力していくことに変わりはない、とのスタンスだ。今後は、3月末に予定されている英国のEU離脱通告から2年間の交渉がどう展開されるかに加えて、欧州各国の選挙結果を注視していく構えだ。  
  

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