TOTO:入浴の素晴らしさを世界に-創業100年目の挑戦

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  • ドイツの見本市に新型の浴槽を出展
  • 海外売上比率50%を目指し入浴文化を提案

国内では温水洗浄便座の代名詞ともなった「ウォシュレット」。海外にもその快適性を浸透させつつあるTOTOは創業100年目の今年、入浴の素晴らしさを世界に広めることに挑む。

  日本の入浴文化の象徴として温泉が外国人観光客の間で人気を集めている。矢野経済研究所の調べによると、近年では都内観光よりも箱根を巡るツアーが好まれる傾向もあるという。浴槽があってもシャワーで済ますのが中心の外国人にとって、温泉は一度は試してみたいあこがれの体験となっている。

  観光で箱根の温泉を訪れた田鑫さん(38歳)は「湯船に浸かるのはとても気持ちいい」と語る。中国では、日本が長寿大国であるのは毎日お風呂に入ってるからと言われているという。入浴することで「血行がよくなり、代謝を促進して体に悪いものを外に出してくれそう」と話した。

TOTOが出展する新型浴槽「フローテーション・タブ」

Source: Toto Ltd.

  TOTOは、海外からも注目を集める日本の入浴文化を新商品につなげようとしている。ドイツのフランクフルトでは3月14日から、世界の衛生陶器メーカーが集うISH見本市が開催。同社は体を寝かせて入浴できる浴槽を出展した。狙いは「究極のリラクセーション」の提案だ。外見が揺り籠の形をした浴槽は、内側の形状が工夫され肩までしっかり湯に浸かれるデザインとなっている。浴槽の中には調整可能な枕が取り付けられ、足腰のマッサージ機能も付いている。

デザインは譲れない

  衛生陶器で国内首位のTOTOはグローバルで商品開発を進める体制を整えており、この浴槽は世界に通じる商品作りの象徴となっている。喜多村円社長はブルームバーグのインタビューで、「形も非常にデザイン性の高いもの」と話した。国内では温水洗浄便座など「機能でナンバーワンメーカーとして十分戦えた」が、海外で評価を得るには「絶対にデザインは譲れない」とみている。

  TOTOが売り上げを伸ばそうとする欧州は衛生陶器発祥の地であり、ビレロイ&ボッホデュラビットなど200年以上の歴史がある競合が多く存在する。また、ISHが開催されるドイツは、近代デザインに大きな影響を与えた造形学校「バウハウス」のお膝元でもある。

喜多村円社長

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  喜多村社長は過去の見本市で海外のライバル会社の洗練されたデザインを目のあたりにしてきた。「僕らはまだデザインで勝てているとは思っていない」。デザインにこだわるとコストが膨らみ製造の制約条件も増えるが「難しいからこそ簡単にまねできない」製品ができるという。

  国内ではシェア首位のTOTOだが、今期(2017年3月期)の海外売上比率予想は22%と、競合のLIXILグループ(リクシルG)の後塵(こうじん)を拝する。TOTOが海外展開で自社営業拠点、自社工場にこだわるのに対し、リクシルGは買収を通じて13年に米アメリカンスタンダード、14年に独グローエを傘下に収め、今期の水回りの海外売上比率は6割近くを占める見通し。

海外比率を50%に

  国内で人口が減少する中、海外進出で後を追うことになったTOTOだが、喜多村社長は3年前のトップ就任時から海外売上比率を50%に高める目標を掲げている。また、市場規模を獲得するための企業合併・買収(M&A)は行わないとした上で、同社にはない「イノベーティブな技術が他にあれば」それを取り込むことには価値があるとの認識を示した。

  野村証券の福島大輔アナリストによると、同社の欧州事業はまだ赤字で、衛生陶器メーカーが海外で事業を展開する際には商品の魅力に加えて商品を設置する「施工力」も課題になると指摘する。ウォシュレットを「据え付ける能力を持っている流通網が欧州にはない」ことから、TOTOにとっては施工業者のネットワークをどう広げていくかが重要な課題との見方を示した。

創造性を刺激

  アルキメデスは、物体が水の中で得る浮力の大きさは物体が押しのけた水の重さに等しいことを説明した「アルキメデスの原理」を、入浴中に思いついたという説がある。TOTOで入浴の研究を行っている加藤智久主任研究員によると、風呂に入りリラックスした状態にさせることで創造性が活発化するという。

新型浴槽の研究風景

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  今回出展する浴槽は、入ったときの体の浮遊感を高めることでリラックスした状態に達しやすくなるようデザインされている。加藤氏らはセンサーを人体に取り付けてデータを取るために何百回と入浴を繰り返し、体の姿勢などを綿密に記録して分析し最適な形状を探った。喜多村社長は、研究成果を今後の国内向け商品開発にも生かしていくと話した。

  TOTOはこれまでに掃除しやすいトイレ、汚れの付きにくいトイレなどを市場に投入してきた。リフォーム産業新聞の調査によると温水洗浄便座の国内市場シェアは12年時点でTOTOが54%と、競合のリクシルGの24%やパナソニックの10%を大きくリードしている。

  下水道がなくくみ取り式のトイレが主流だった100年前、2万個近くの試作品を作ることからスタートした同社は、日本初となる洋式便器の製造を1917年に開始した。喜多村社長は「事業者が求めるべきは顧客の満足であり、利益はその影のようなもの」という創業者の思いがいまのTOTOにも受け継がれているという。

  ISHでお披露目した浴槽はサイズが2メートルを超え、ユニットバスが主流の国内一般家庭の浴室には設置が難しいサイズ。喜多村社長によると、商品化後は欧米、中東、中国などまずは海外で販売していく方針だという。来期(18年3月期)中の商品化を目指している。

  温水洗浄便座では頂点を極めたTOTOにとって、世界の浴室での勝負はまだこれからが本番。喜多村社長は「浴槽はヨーロッパでは特に大事。自分たちの技術の進化を見せたい」と語った。

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