ナイフがなくても食べられる柔らかさと、美しい霜降りの「サシ」から溶け出すバターのようなコクから、和牛は世界最高の牛肉と評価されることが多い。和牛と表示可能な子牛は生まれてすぐに登録され、厳しい基準に沿って飼育される。手がかかっているだけに、値段も張る。例えば米カリフォルニア州ビバリーヒルズにあるセレブ御用達のステーキハウス「CUT(カット)」では、宮崎県産和牛のステーキが2オンス(56グラム)が140ドル(約1万6000円)する。

  だが、和牛を誰もが称賛しているわけではない。英国で今週発売予定の牛肉レシピ本「プライム:ザ・ビーフ・クックブック」の著者、リチャード・ターナー氏は和牛が「嫌いだ」と断言。食べると「味わいが頭全体に広がるが、すぐに消える。それが好きという人はいるが、僕は英国人だ。牛肉の風味をもっと長く味わっていたい」と話す。

ウムの石井義典氏
ウムの石井義典氏
Photographer: Richard Vines/Bloomberg

  ロンドンで和牛がどのように料理されているかを調べるため、筆者はメイフェア地区にあるミシュラン2つ星の日本食レストラン「UMU(ウム)」の石井義典シェフと食べ歩いた。

  パークレーンにある「CUT(カット)」はシェフ自身が和牛びいきで、最高級の鹿児島産和牛を使ったニューヨーク・サーロイン・ステーキ(6オンス)が140ポンド(約2万円)から。和牛は中東出身者の間で特にファンが多いという。カナリーワーフにあるイタリアンの店のベラ・コサでも、和牛がメニューに載ることがある。そしてケンジントンの日本食レストラン、ヤシン・オーシャン・ハウスではあぶりの和牛をネタにしたにぎりずしや、和牛すき焼きが食べられる。そして、メイフェア地区のレストラン、グリーンハウスではニンジンやグレープフルーツ、黒ごま、タマリンドを使ったフレンチ風の和牛料理を味わうことができた。ここのシェフ、アルノー・ビニョン氏は「日本と同じように少量しか食べないのであれば(和牛)は良い」と話した。

「ベラ・コサ」のイタリアン風和牛
「ベラ・コサ」のイタリアン風和牛
Photographer: Richard Vines/Bloomberg

  ファンも多い和牛だが、ステーキに関する本の著者、マーク・シャツカー氏は和牛をあまり高く評価していない。素晴らしい肉ではあるが「ステーキではない。全く違う。どちらかというとフォアグラだ。ステーキからは血がしたたる。動物の肉を食べていると実感でき、自分の中の野生が満たされる。和牛はもっと繊細だが、だからといって(他の牛肉より)優れているわけではない」と述べた。

「ヤシン・オーシャン・ハウス」の和牛にぎり
「ヤシン・オーシャン・ハウス」の和牛にぎり
Photographer: Richard Vines/Bloomberg

  石井シェフはUMUで群馬県産和牛を出すが、お客さんの一部にはその良さが理解されておらず、脂っこすぎると苦情を受けたことも、焼くと霜降り部分が溶けて見えなくなるため、本当の和牛を使っていなのではないかとクレームをつけられたこともあると話す。ただその石井シェフも、自宅で牛肉が食べたい時は和牛でなく、スーパーでスコットランド産の熟成ビーフを買って調理する。「牛の本当の味が好きなんだ」と話した。

「グリーンハウス」のフレンチ風和牛
「グリーンハウス」のフレンチ風和牛
Photographer: Richard Vines/Bloomberg

原題:Is Wagyu the World’s Most Overrated Steak? (抜粋)

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