日立製作所は、トランプ米大統領の掲げる1兆ドル(約115兆円)規模の国内向けインフラ関連への投資政策を受け、同国での鉄道を中核とした交通インフラ事業の受注強化を目指している。

アリステア・ドーマー最高経営責任者
アリステア・ドーマー最高経営責任者
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  同社鉄道ビジネスユニットの最高経営責任者(CEO)アリステア・ドーマー氏が9日、ブルームバーグのインタビューで語った。同氏は、米国での事業展開について「まずはトランプ大統領の掲げるバイ・アメリカン政策がどういった方向に進むのかを見極めて正しい戦略を策定する必要がある」との見方を示した。

  日立は現在、鉄道事業を中核の一つとして注力している。2014年には鉄道ビジネスユニットの本社機能を英国に移し、日立レールヨーロッパとして英国で高速鉄道車両などを製造。15年にはイタリアの防衛・航空会社フィンメカニカから、車両製造事業のアンサルドブレダを買収。この買収で欧州に加えて米国のカリフォルニア州とフロリダ州にも拠点を確保した。また、16年には米フロリダ州マイアミに鉄道車両工場を新設し、合計136両(68編成)の鉄道車両を製造中。

英国ダーラム州ニュートン・エイクリフにある日立の鉄道工場
英国ダーラム州ニュートン・エイクリフにある日立の鉄道工場
Photographer: Matthew Lloyd/Bloomberg

  トランプ大統領は2月末の議会演説で、選挙選中の公約だった国内向け大型インフラ投資について言及。対象は鉄道をはじめ道路や橋、空港、ダムなどの公共基盤の整備や補修となる見込み。複数の大規模プロジェクトをてこに、雇用創出と景気の拡大を目指す考えだ。

  ドーマー氏は「米国の多くの市町村や都市が鉄道に投資しており、かなり大きな好機があるとみている」という。同社はメリーランド州ボルチモアでの鉄道事業に応札している。この他、米国で「複数の受注機会を分析しているところだ」とドーマー氏は述べた。

世界3強と競合できる

  ドーマー氏は、現時点では鉄道で世界3強といわれる加ボンバルディアや独シーメンス、仏アルストムと競合できる力はほぼ確立できているとの認識を示した。日立は12年に総事業費1兆円規模の英都市間高速鉄道計画で866車両を受注した。これを受け15年に日立としては初の鉄道車両製造工場を英ダーラム州ニュートン・エイクリフに設けた。

  その後も、スコットランド向けの鉄道車両234両を受注している。直近では、ボンバルディアと共同で、英地下鉄車両3000台規模の受注に向けるなどに取り組んでいると語った。

  英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた国民投票の結果の影響について「不確実性が増したことは事実」と認める。ただ「現在までにネガティブな影響はなく、本社機能を英国から他の欧州地域に移転する考えもない」と述べた。さらに、離脱による英国とEU各国間の貿易に関税などが生じることになれば、英国内での受注活動においては、英国企業としての地位確立に努力してきた日立よりもむしろライバルの欧州企業のほうが輸出が難しくなり影響を受ける可能性があるとした。

  日立は今後の成長に向け、企業の買収・合併(M&A)を積極的に実施する方針を打ち出している。ドーマー氏は、鉄道ユニットとして方針は打ち出してはいるものの、現在具体的に考えている案件はないとした。また、経営危機で揺れる東芝の鉄道システム事業について、売却の意向が示された場合に検討するかとの問いに対しては、「何も考えていない。現時点では先方との接触もない」と話した。

  SMBC日興証券の嶋田幸彦シニアアナリストは日立の欧州での鉄道事業について「英国中心の活動である限り、EU離脱の影響は限定的であり、あまりネガティブにみる必要はない」と指摘。アンサルドブレダを買収したことで欧州大陸側のイタリアにも拠点を得たことから、リスクは回避できるとの見解を示した。「現時点ではドーマーCEOのリーダーシップのもと日立の鉄道ビジネスは順調に推移している」との認識を示した。

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