日本銀行が来週開く金融政策決定会合は、ブルームバーグの事前調査で全員が現状維持を予想した。緩和予想が1人もいなかったのは昨年12月会合前の調査から3回連続。黒田東彦総裁の任期中の追加緩和観測が消えつつある一方で、年内にも長期金利の誘導目標を引き上げるとの見方がくすぶり続けている。

  15、16両日の決定会合についてエコノミスト41人を対象に6-9日に調査した。黒田総裁の任期の2018年4月までに長短金利操作の下でターゲットである長期金利(10年物国債金利がゼロ%程度)を引き上げるとの予想は14人(34%)と、3分の1を占めた。追加緩和期待は引き続き後退しており、黒田総裁の任期中に追加緩和はないとの見方が38人(93%)と前回調査(88%)を上回った。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は、日銀が9月に10年金利目標を0.1%程度に引き上げる可能性があるとみる。その背景として、原油価格上昇や人手不足、切手など公共料金の値上げなどで、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)が年末1%台半ばに届く可能性を挙げる。

  さらに嶋中氏は、海外長期金利が上昇した場合、日銀は国債買い入れを増やし10年金利をゼロ近辺に抑え込もうとするので、マネタリーベースの増加が一段の円安を招くと指摘。そうなると、トランプ大統領による「『為替操作』批判を呼び込みかねない」とことから、日銀が少し妥協せざるを得なくなる可能性がやや高いとみる。

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  佐藤健裕審議委員は1日の徳島市での会見で、コアCPI前年比が年末にかけて1%に届き、長期金利の0%維持が困難になる可能性があるとして、「10年金利目標を微調整することは十分あってしかるべきではないか」と述べた。総務省が3日発表した1月のコアCPIは前年比0.1%上昇と、エネルギーの下落幅が縮小したことで2015年12月以来13カ月ぶりにプラスに転じた。

  中曽宏副総裁は2月9日午後、高知市内で会見し、経済や物価に対する見方が改善した場合、それに見合った形で長期金利操作目標を引き上げても、金融の緩和度合いを減じることにはならないと述べた。

  サーベイの回答の中で、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「佐藤委員の発言は極めて妥当だ」と指摘。10月に長期金利誘導目標が0.3%に引き上げられると見る。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅エコノミストも「日銀が早ければ今年10-12月期から、長期金利目標にバンド目標を導入し、長期金利の目標上限を徐々に引き上げていく」と予想している。

引き上げ急げば長短金利操作は不能に

  一方で、たとえコアCPIが1%に達しても、日銀が長期金利の誘導目標を引き上げるのは容易ではないとの見方も根強い。シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「日銀が10年金利目標を微調整することで、日銀が柔軟に目標の変更を行うとの見方が市場参加者の間で強まれば、それ自体がイールドカーブコントロールを難しくする可能性が高い」と指摘する。

  大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストも「年後半にかけ物価は上昇する見込みだが、エネルギー価格の反転が主因であり、長期金利誘導目標の微調整は正当化し難い」と指摘。「基調的なインフレ動向の顕著な改善を伴わない状況下で微調整を急げば、物価2%を実現する意志に疑念が浮上するほか、さらなる微調整の観測が高まりやすくなり、イールドカーブコントロールが困難となる恐れがある」とみる。

  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、佐藤審議委員の見解は「必ずしも政策委員会のコンセンサスではないだろう」と指摘。三井住友銀行の西岡純子チーフエコノミストも「物価が1%近くまで上昇する中でも、長期金利を0%近傍に維持することで金融緩和効果がより一層強まる、という主張の方が、目先はまだ審議委員の大宗を占めるのではないか」とみる。

黒田体制下では困難か

  日銀は時期尚早の長期金利引き上げ観測が高まるのを避けるため、物価上昇率が上昇し始めた段階で、長期金利を引き上げるための条件を示したガイダンス(指針)を明らかにするかどうか検討していることが複数の関係者への取材で分かった。

  明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「物価目標未達下での長期金利の操作目標を引き上げは大義名分が立ちにくい」と指摘。「長期金利を引き上げた方が物価目標の達成が近づくとの理屈付けが必要だが、不可能に近い。それができたらできたで、これまでの政策の誤りを認める必要が出てくる」という。

  その上で、日銀が仮に長期金利誘導目標を引き上げるのであれば、「昨年9月同様、複雑な枠組み変更の中に真意を紛れ込ませる手法しかないように思うが、黒田総裁下での再度の枠組み変更はハードルが高い」としている。

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