労働組合が企業と賃金交渉を行う今年の春闘での賃上げ率は、前年並みにとどまると多くのエコノミストは予想している。人手不足で賃上げ圧力が強まる一方、米新政権の政策の不透明感や雇用をめぐる構造改革の遅れから大幅な賃上げに踏み切れないとみている。

  3月2-3日、ブルームバーグがエコノミスト14人を対象に調査した。定期昇給と基本給の水準を底上げするベースアップを合わせた賃上げ率の予想中央値は2.04%で、ベアは0.38%。昨年の春闘では、全規模企業の平均賃上げ率は2%、ベアは0.44%だった。春闘は3月15日が集中回答日。

   2014年4月の消費税率引き上げ以降、個人消費は低迷している。政府は賃上げにより消費が喚起され、企業業績の改善につながるという「経済の好循環」に期待を寄せる。安倍晋三首相は春闘に関し「少なくとも」前年並みの水準の賃上げを経済界に要請した。

   「アベノミクスの成功は企業経営者の賃上げ姿勢にかかっている」と農林中金総研の南武志主席研究員は分析。「労働者は労働生産性の上昇分は受け取る権利があり、それができていないと持続的な物価上昇が起きようがない」と述べた。

  野村証券経済調査部の宮入祐輔氏は、成長期待の低下や労働市場改革の遅滞などの構造的な要因から、労働組合は賃上げに「強気に出れない」と分析。また今後は原油価格の回復に伴う物価上昇が見込まれることから、「実質賃金、所得の減速感は消費の加速抑制を招く」と危惧する。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の戸内修自氏は、米通商政策をめぐる不透明感を懸念に挙げた上で、昨年の賃上げ率が前年を下回ったことから、今年の春闘は「賃金上昇期待、インフレ期待をつなぎとめるためにも重要」と指摘する。一方で、「働き方改革への取り組みが広がるなかで平均的な賃上げのみに焦点を当てた議論が曲がり角に来ている」と話した。

  働き方改革は春闘のもう一つの焦点だ。安倍首相は2月の働き方改革実現会議で、残業時間の限度を定めた罰則付きの法改正の必要性を訴えた。経団連と連合は現在、残業時間などについて意見交換をしており、上限を設ける方向で3月中旬までの合意を目指している。ただ残業代の削減は、労働者にとって収入減につながる場合もある。

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