富士重工業の自動車販売台数の約6割を占める米国では、トランプ大統領の通商政策や販売奨励金(インセンティブ)の高騰などで不透明感が増している。吉永泰之社長は、それでも米国を事業の柱としていくことが生き残りにつながると確信している。

吉永泰之社長
吉永泰之社長
Photographer: Ko Sasaki/Bloomberg

  「他社よりも付加価値を転嫁できる戦略をとっている」--。吉永社長は2日の本社でのインタビューで、自社の自動車ブランド「スバル」にとって、米国は自動運転や環境対応など増大する技術開発コストを転嫁できるビジネスモデルが展開できると述べた。その上で、「これしか道はない」という言葉で米国販売拡大が生き残りの鍵を握るとの認識を示した。

  スバルの米国販売は8年連続で過去最高を更新しており、今年は前年を約9%上回る67万台を見込む。「アウトバック」や「フォレスター」など安全面で評価の高いスポーツ型多目的車(SUV)が好調で、路面が凍結する北部の寒冷地域(スノーベルト)で市場占有率が5%を占める一方、温暖な南部(サンベルト)では同1.8%にとどまり、販売拡大の余地があるという。

  吉永社長は、世界販売の6割を米国が占める現状は「バランスが悪い」としながらも、環境対応コストを新興国での販売価格に反映するのは厳しいとして、北米でのブランドイメージ向上に努めると述べた。4月1日には社名を自動車ブランドと同じスバルに変更する。

  米国に軸足を置く戦略について、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、景気後退局面でリスクとなる可能性があるが、足元の米景気の状況では「正解とみている」とした。社名変更に関しては「海外の投資家、ユーザーからするとスバルで統一した方がブランドは浸透しやすい」と評価した。

  自動車業界では、自動運転などの新技術開発や環境規制対応を迫られており、中小規模メーカーには費用負担が課題となっている。国内最大手のトヨタ自動車は連結対象のダイハツ工業や日野自動車との連携を強めているほか、マツダやスズキとも業務提携を進めている。仏ルノー・日産自動車連合は三菱自動車と資本・業務提携するなど、業界では合従連衡が進み、グループとして相乗効果を高める動きが加速している。

増大するインセンティブ

  米国でブランドイメージを高めてきたスバルだが、インセンティブの増大が利益を圧迫している。販売促進のための値引き用の資金ではなく、月払いリース料を引き下げる支援分や、車両購入者に提供するゼロ金利ローンが現地金利が上昇する中で増加しているためという。

  業界としてゼロ金利キャンペーンを展開する中、吉永社長は、スバルが真っ先に止めるのは販売減につながると慎重だ。しかし、「どこまでもゼロでやり続けようとは思っていない」とも話し、今年度末までには現地法人を含めて対応を協議する。営業利益率は今後も「10%以上は維持したい」と述べた。

  調査会社オートデータによると、スバルのインセンティブは昨年度1台当たり約832ドル(約9万5000円)と、業界平均の約3350ドルを大きく下回っていた。高橋充専務は今年2月の決算会見で、今年1-3月のインセンティブは同社積算で1650ドルを見込んでいると話していた。米消費者団体専門誌コンシューマー・リポートが2月に発表した今年の自動車ブランドランキングによると、アウディなどの独勢、トヨタの高級車ブランド「レクサス」に次ぎ、スバルが第5位だった。

  スバル車は安全面で高い評価を得ている。米国の道路安全保険協会は2017年の耐衝撃性能試験などの安全性評価で、同年型の小型車「インプレッサ」に最高評価を与えている。

トランプ政策

  スバルの昨年の米国生産は29万7000台と現地販売の5割弱にとどまった。米北東部インディアナ州の生産拠点では、販売拡大で段階的に生産能力を増強しており、18年度までに年産43万6000台に増強するが、その後の計画はない。国内生産や雇用を重視するトランプ大統領は国境税導入に言及しているが、吉永社長は生産体制の変更を「すぐにはできない」として、具体的な対応の検討には入っていないと述べた。
  
  吉永社長はまた、日米経済協議の窓口となるペンス副大統領とはインディアナ州知事時代に交流があり、現地での雇用創出などの「努力」は「ちゃんと分かってくれている」との認識を示した上で、生産移管には時間がかかることから、対応は米政権の政策が決まってからでも遅くはないと述べた。

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