事故から6年、原子炉内の一部明らかに-福島第一廃炉作業は前途多難

  • 線量の高い2号機へのロボット投入は目的達せず、廃炉費用8兆円に
  • 汚染水対策は正念場、たまり続けるトリチウム水の処分法が課題に

東京電力・福島第一原子力発電所の事故から6年が経過し、原子炉内部の状況がロボットによる調査でようやく明らかになりつつある。ただ、格納容器内の放射線量の高さは調査を阻み、廃炉で最大の難関とされている溶け落ちた燃料(デブリ)を取り出すことの難しさを浮き彫りにしている。

2号機内で立ち往生したサソリ型ロボット

Source: International Research Institute for Nuclear Decommissioning (IRID)

  東京電力ホールディングスは今年に入り、炉心溶融(メルトダウン)を起こした福島第一原発1-3号機の中で格納容器内の放射線量が最も高いとされる2号機に東芝製ロボットを投入した。核燃料を収納していた圧力容器の下の足場につながるスロープを掃除するロボットは高い放射線量の影響で約2時間でカメラが故障。続いて投入した調査用のサソリ型ロボットはスロープ上に堆積するゴミに足を取られ、目的の圧力容器の下に到達せずに止まってしまった。

  一連の調査で格納容器内の状況が一部明らかになり、圧力容器から約4メートル離れた位置で毎時210シーベルトという放射線量を確認した。東電HD原子力・立地本部長代理の岡村祐一氏は「外に影響を与えずに仕事ができたという点で非常に大きな成果があった」と語るが、今夏に決定するデブリの取り出し方針の策定に必要な情報は十分得られておらず、2号機のさらなる調査予定は明らかにしていない。

  今月、2号機よりも格納容器内の水位の高い1号機にはワカサギ釣りのようにカメラを水中に垂らす日立GEニュークリア・エナジー製ロボットでの調査が予定されており、さらに水位の高い3号機向けに投入する東芝製の水中遊泳ロボットは今春完成する。

  圧力容器内にあった1号機の燃料はほぼ溶け落ち、圧力容器全体を覆う格納容器の底のコンクリート(厚さ2メートル)を50-60センチメートル侵食している可能性があり、2、3号機の燃料はある程度圧力容器内に残っていると推定されている。東電HDはロボットを活用して実際のデブリの形状や詳細な位置を把握する予定だ。

凍土壁は99%以上凍結

  デブリの取り出しでは、格納容器に水をためて行う方式と空気中で行う方式の二つが検討されている。水中方式は、米スリーマイル島原発事故で用いた既存技術を応用でき、原子力規制委員会の田中俊一委員長は水で放射線を遮蔽(しゃへい)して取り出すのが理想的と推奨する。ただ1-3号機の格納容器が全て破損しており、冷却のための注水が汚染水となって外に流れ出ている状況だ。高放射線下で穴の大きさや場所を特定し、補修するためにもさらなるロボット開発は必要となる。

デブリ処理が難航する福島第一原発

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  東電HDの中長期ロードマップによると、初号機でデブリ取り出しを開始する2021年度より前に建屋内の水を抜いて除染することを計画している。格納容器から漏れ出ている冷却水と建屋内に流れ込む地下水からなる汚染水のうち、地下水流入を減らす切り札として導入された凍土壁はまだ効果を発揮していない。16年3月に凍結を開始した凍土壁は1-4号機を取り囲む全長1500メートルの99%以上が凍結したものの、凍結前と変わらず毎日300トンの汚染水がタンクにたまり続けている。

  東電HDの岡村氏は、凍土壁を完全に凍結して地下水を遮断し、建屋周辺の水位を急激に下げると、相対的に水位の高くなった建屋内から汚染水が外に流れ出す懸念があるため、未凍結箇所を残していると説明。年度内をめどに建屋内外の地下水位をコントロールするためのくみ上げポンプを増強し、規制委の凍結許可を待っている状況だという。

トリチウム汚染水

  この間も汚染水はたまり続け、福島第一原発の建屋内や約900基のタンクに計約100万トンの汚染水が存在し、このうち放射性物質除去装置をもってしても除去が困難なトリチウムを含む汚染水が7割を占める。東電HD執行役員の内田俊志・福島第一原発所長は、「トリチウムを取り除くことはできないので、増える汚染水は何らかの処理をしていかなければタンクを造り続けなければいけない」と頭を抱える。

  東電HDの原子力事業を外部の視点で監視する原子力改革監視委員会委員長のデール・クライン氏は、トリチウム汚染水を海洋に放出すべきだと指摘している。膨大な数のタンクにためておくと漏えい事故の可能性が高まるため、水で薄めるなど濃度をきちんと管理した上で放出する方が良いとの考えだ。

  政府は有識者会合を通じてトリチウム汚染水の処分方法について地層注入や海洋放出など五つの選択肢をまとめ、さらに別の有識者会合でこれらの処分方法の社会的影響について風評被害、被ばく評価などの観点から専門家に意見を求め、最適な方策を探っている。

チャレンジ

汚染水貯蔵タンク

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  デブリの取り出しや汚染水対策と平行して、東電HDが取り組む使用済み燃料の取り出し作業は、定期点検中でメルトダウンを免れた4号機の1535体が14年に完了したのみ。3号機からの取り出しは作業員を守るための除染に時間がかかり、18年夏にずれ込む見通し。高い放射線に阻まれ少しずつ遅れる作業工程は、30-40年で完了する廃炉計画の長期化や廃炉費用がさらに膨らむ可能性を高める。8兆円とされている廃炉費用は、電気料収入を主とする東電HDの利益から捻出される。

  6年経過してもなお全容を把握できていないデブリを取り出す廃炉計画を継続するよりも、旧ソ連チェルノブイリ原発のようにコンクリートで覆う石棺化が経済的ではないかという問いに対し、東電HDの岡村氏は、デブリを建物で長期間閉じ込めるのは、「正しい保管の仕方ではない」と断言。より安全性の高い廃炉の完遂に向けて「われわれはチャレンジしていく。時間はかかるかもしれないが」と述べた。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE