【FRBウオッチ】議長の背中を押した物価統計、注目すべきは失業率

  • インフレ目標達成が視野、物価上昇の最終局面は景気後退と一致へ
  • 失業率はボトムから0.5ポイント上昇で景気後退入り

「今月の会合で雇用とインフレーションがわれわれの期待通りに進展していると判断すれば、フェデラルファンド金利の一段の調整が適切なものとなる可能性が高い」。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は3日の講演で、あと11日に迫った連邦公開市場委員会(FOMC)での金利引き上げを強く示唆した。金利決定に際し「今月の会合で」と、目前の会合を明確に示すのは異例であり、市場への刷り込みに並々ならぬ意欲がうかがえる。

  このイエレン議長発言の2日前に、ブレイナードFRB理事が「前進が続くと想定すると、緩和の解除をさらに進めることがすぐに適切になりそうだ」と述べていた。FRBが市場に重要な指針を伝達する場合、理事が先行して表明することも異例であり、特に2日後に議長の公式日程で発言が予定されていればなおさらだ。

イエレンFRB議長

Photographer: Aaron P. Bernstein/Bloomberg

  しかも、ブレイナード理事とほぼ同時に、FOMC副議長を務めるダドリー・ニューヨーク連銀総裁も同様の趣旨の発言をしていた。これはイエレン議長はじめ執行部がFOMC会合が間近に迫る中で、利上げの意思を固めたことを物語っている。

  イエレン議長は2月14、15両日にわたった議会証言で利上げについて、「今後のFOMC会合(upcoming meetingsと複数形)では、雇用とインフレーションが予想と一致する形で改善し続けるかどうかを評価する。そのように判断された場合、金利のさらなる調整が適切となる可能性が高い」と表明した。この時点では将来の複数の会合を想定しており、3月会合と決め打ちしていなかったのである。

  この証言から3月1日にブレイナード理事が発言するまでの間に、3月会合での決定を促す重要なデータが入ったことになる。雇用統計は3月10日まで待たねばならないので、物価統計が金融当局の背中を押したと考えられる。労働省は2月15日朝に1月の消費者物価指数(CPI)を発表していた。CPI総合指数は1月に前年同月比で2.5%上昇と、前の月に比べ0.4ポイントの大幅な伸びを示した。

  さらに、3月1日朝に商務省が公表した1月の個人消費支出(PCE)価格指数は、前年同月比で1.9%上昇と、前の月の同上昇率を0.3ポイント上回った。PCE価格指数はFOMC政策目標の基準になるもので、目標の2%上昇がほぼ確実の情勢となった。こうした一連の物価統計の上振れが執行部の背中を押したことは間違いないだろう。

  10日に発表される2月の雇用統計が市場予想から大きく離れない限り、来週のFOMCでの利上げ決定はほぼ確実となる。ここで注目すべきは失業率であろう。金融当局者は失業率について、「ほぼ横ばいに推移している」と認識しているが、実際には昨年11月の4.6%をボトムにして、2カ月連続上昇して1月に4.8%となった。

  市場の予想通り2月に4.7%に低下すれば、非農業雇用者数が予想の19万人増を大幅に下回らない限り、利上げが実行される可能性が高い。失業率が4.8%にとどまった場合も同様だ。当局者は失業率は4.8%で横ばい推移と認識しているのだから。

  問題は4.9%に上昇した場合だ。この問題を考える場合、政策当局は4.6%から4.8%まで0.2ポイント上昇してきた中で、なお「横ばい」と判断していることが鍵になる。つまり、0.2ポイント跳ね上がっても誤差の範囲内ということである。これは失業率がボトムを付け、上昇に転じた場合のリスクをまだ認識していないことを意味する。当局は現在4.8%を基準に横ばい圏と認識しており、あと0.1ポイントの上昇で4.9%にとどまれば、なお横ばい圏とみる可能性が高い。

  当局者は自らの金融政策で米国経済が改善されると自信を持っているため、常に「正常性バイアス」がかかっていることに注意する必要がある。そもそも11月に4.6%まで低下した失業率が4.8%に上昇しているにもかかわらず、「横ばい」と認識していること自体、楽観的に過ぎる。過去の景気拡大期を振り返ると、失業率がボトムから0.5ポイント上昇するとほぼ確実に景気後退入りしてきたのだから。

  つまり、FOMC当局が「最大限の雇用確保」が近いという状況下で、利上げを継続していくというのは、自ら景気後退に飛び込んでいくようなものだ。「最大限の雇用」達成は景気の山だからである。インフレについても同様だ。物価は景気遅行指標であり、物価上昇の最終局面は景気後退と一致する。

(【FRBウオッチ】の内容は記者個人の見解です)
  
  

  

  

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