世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2016年10-12月期に過去最大の運用益を上げた。トランプ米大統領の就任に先んじた世界的な株価上昇や円安進行が寄与した。

  GPIFが3日午後に公表した10-12月期(16年度第3四半期)の運用状況によると、収益額は10兆4973億円と13年1-3月期の7兆6273億円を超えた。収益率は2四半期連続のプラス、これまでで最も高い7.98%だった。内外株式と外国債券の収益額がいずれも過去最大となり、全体の収益を押し上げた。

  資産別の収益率と収益額を見ると、国内株は15.18%と4兆6083億円、外株は16.46%と4兆8213億円となった。外債は8.82%と1兆5762億円。一方、国内債券はマイナス1.07%と5190億円だった。

  GPIFの運用環境は昨年秋以降、好転している。トランプ氏が唱える大規模な景気刺激策を先取りし、世界的な株高・金利上昇が進行。1ドル=100円突破が目前に迫っていた円相場は12月に118円66銭まで下げた。国内の長期金利はプラス圏に浮上。運用資産で最も大きな割合を占める国内債の運用には打撃となったが、全体の約6割を占める日本株と外貨建て資産には追い風となった。

  GPIFの高橋則広理事長は発表資料で、運用が好調だった背景について、「主要国の景況感が改善する中で、米国による財政拡大期待の高まりやOPEC(石油輸出国機構)総会における減産合意などもあり、米国株式が史上最高値を更新するなど、世界的に株高基調が強まった。また、米国の長期金利が上昇したことから、ドル高基調となった」ことなどを指摘。今後の運用方針に関しては、「短期的な市場変動に捉われず、年金財政に必要な積立金を残すためにしっかりと受託者責任を果たす」とコメントした。

  16年12月末時点の運用資産は144兆8038億円と、これまで最高だった15年6月末の141兆1209億円を超える規模に膨らんだ。前身の年金資金運用基金として自主運用を始めた01年度からの累積収益は53兆617億円に増加。第2次安倍晋三内閣の発足直後に当たる12年末からでは約35.5兆円増えた。

  年金特別会計が管理する資金も含めた積立金全体に占める国内債の割合は、昨年末に33.26%と2四半期連続で過去最低を更新。資産構成の見直し後で初めて目標値の35%を下回った。国内株は23.76%、外株は23.16%とともに最高を記録。外債は13.37%と5四半期ぶりに上昇した。短期資産は6.46%と資産構成見直し以降で最高だった9月末から低下した。

  インフラ投資やプライベートエクイティ(PE、未公開株)、不動産などのオルタナティブ(代替)投資は0.07%に微増。オルタナティブ投資の上限は全体の5%になっているが、広報責任者の森新一郎氏は記者説明会で、国会での議論などを通じて関心を集めているインフラ投資については国・地域別の投資残高を公表できないか、共同投資の相手先にも相談した上で検討する方針を示した。

  TOPIXは昨年12月末に9月末比で14.8%、MSCIコクサイ・インデックス(円換算)は16.9%、それぞれ上昇した。米国債の10年物利回りは0.85ポイント高い2.4443%。上昇幅は09年4-6月期以来の大きさとなった。円の対ドル相場は1ドル=116円96銭と15円61銭下落。データでさかのぼれる1987年以降で最大の下げとなった。日本の長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは0.040%と0.125ポイント上昇した。

  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、GPIFによるリスク性資産の重視は「政府がデフレ脱却を目指す中での国策的な意味合いもあった」と指摘。巨額の運用益は「今期は外部要因にも助けられ、結果オーライかもしれないが、政策の流れに沿っており、一安心ではないか」とみている。

  GPIFは昨年7月に続き、11月の保有銘柄開示でも、市場への影響は確認されなかったとする検証結果を別の資料で発表。7月に今年度の年次報告書を公表する際に、3月末時点の保有銘柄を開示する方針という。

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