トランプ米大統領は議会演説で、法人・個人税制改革に関して新たな詳細には触れなかった。米企業の輸入に課税する一方で輸出には控除という、議論の的となっている案を大統領が支持するのか不明なままだ。

  投資家の中には税制ビジョンを具体的に示すことを期待していた向きもあったが、大統領は他国が「非常に高額な関税や税金」を課すために、米国製品が不利な状態を強いられているという従来の主張を繰り返すしたにとどまった。ライアン下院議長が気に入っている法人税の「国境調整」への支持も示さなかった。

議会演説するトランプ大統領
議会演説するトランプ大統領
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  さらに、「驚異的」な税制改革案を近く発表すると約束していたにもかかわらず、個人税制については「中間所得者層向けに大規模な税負担の軽減措置を提供する」とし、大まかな青写真を示しただけだった。

  米国の輸出品に対する外国の課税について、大統領はライアン議長の国境調整計画について「支持間近」だと分析するのは、投資顧問・コンサルティング会社ベーダ・アドバイザーズのマネジングパートナー、ヘンリエッタ・トレイズ氏だ。提案内容は現在35%の法人所得税率を、国内売り上げと輸入に対する20%課税に代えるというもので、米企業はもちろん、ホワイトハウスのスタッフにも賛否両論がある。

  小売業界や自動車メーカー、それに輸入原油に依存する製油各社は、国内消費者のコストがかさむことになるとして、提案には反対だ。ゼネラル・エレクトリック(GE)やオラクルなどの推進派は、国境調整により国内生産が増加し、雇用の促進やドル高につながると主張する。ドルが高くなれば輸入品の価格は下がり、輸出のコストが上がって、税金の悪影響も帳消しになるという訳だ。

  ブルームバーグは2月28日、トランプ政権内で国境調整を巡り意見が一致していないと伝えた。政権内の高官によると、バノン首席戦略官兼上級顧問をはじめ、ミラー補佐官、プリーバス首席補佐官、ロス商務長官、ナバロ国家通商会議(NTC)委員長は賛成派。それに対し、コーン国家経済会議(NEC)委員長およびムニューシン財務長官は反対派だという。

「生命維持装置」

  それでも、上院共和党には、国境調整に冷淡な態度を示している議員もいる。上院院内幹事のジョン・コーニン議員は2月初め、提案は「生命維持装置」付きの瀕死(ひんし)状態で、上院議員は他の提案を検討していると語った。上院財務委員会のオリン・ハッチ委員長は同月28日、CNBCのインタビューに答え、提案をまだ留保していることを明らかした。

  提案実現には、トランプ大統領から強力な支持を取り付けることが必要だとトレイズ氏は分析している。上院共和党議員に対して「強い圧力をかけねばならず、それはトランプ大統領しかできない」と語っている。「上院共和党議員50名の賛成を得るためには、大統領の力がどうしても必要だ」。

個別案

  トランプ大統領の個人減税もいまだ明らかになっていない。選挙運動時には、基礎控除額を上げる、控除項目を増やす、子供や扶養者に対する税優遇措置を新設するなど、包括的な個人減税を提案している。その提案には、現行7つの個人税率を3つに集約し、最高税率を39.6%から33%に減らすことが盛り込まれている。

  ムニューシン財務長官が昨年11月末に語っていたところによると、最高税率が下がるものの、控除や優遇措置が削減されるため、「高額所得者にとって、明らかな減税とはならない」という。

  しかし、独立系調査機関の分析によれば、選挙活動時の減税提案では高額所得者が最も恩恵を受ける。アーバン・インスティチュートとブルッキングズ研究所の合弁、タックス・ポリシー・センターの分析によると、年収370万ドル(約4億2200万円)以上を稼ぐトップ0.1%の高額所得者にとっては、平均110万ドル、つまり、税引き後所得の14%の減税になるという。それとは対照的に、課税区分で5番目の中間層の減税は約1010ドルで、税引き後所得の1.8%にすぎない。

  大統領が詳細を発表しなかったことで、落胆した投資家もいる。演説前には、市場は「詳しい内容を発表することに準備万端」と見ていた。資産運用会社インテレクタス・パートナーズのチーフエコノミスト兼クレジットポートフォリオ運用責任者のベン・エモンズ氏はそう語る。

  ノーザン・トラストのケイティ・ニクソン最高投資責任者(CIO)も市場で相場上昇が続くには「減税やインフラ投資に関連して検討されている政策変更の一部に関する具体的内容が必要だ」としている。南カリフォルニア大学のエドワード・クライバード教授も詳細の欠如は「税制に関するチームが確定していない証拠。提案は複雑で時間がかかるため、今は無難な道を選んだ」と分析する。

原題:Trump’s Scant Specifics Leave Questions on His Border-Tax Plans(抜粋)

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