年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の収益環境は、トランプ米大統領が掲げる景気対策への期待で好転している。だが、国内株式で市場平均を上回る収益を目指すアクティブ運用については、順風満帆だとは言い難い。

  2016年4月から17年2月末までのTOPIXの収益率は14%程度。一方、GPIFが公表している保有銘柄を基にブルームバーグがアクティブ運用の収益率として試算した結果では、主な運用指標と比べてGPIFの保有額が多い30銘柄は約13%、構成比が高い同数の企業は12%前後にとどまっている。

  SMBC日興キャピタル・マーケッツのストラテジスト、ジョナサン・アラム氏(ロンドン在勤)は、アクティブ運用の手数料などがパッシブより高いことも考慮すると、GPIFには「やや分が悪い情勢だ」と指摘。「GPIFは収益向上を目指してリスクを取れば、実際には逆の結果に終わる可能性があるという問題を直視しなければならない」と言う。

  GPIFは運用資産が132兆円を超える世界最大規模の公的年金。日本の公的年金制度は高齢化で膨張する給付額を現役世代からの保険料や税金などで賄い切れず、1割前後をGPIFからの運用益や積立金の取り崩しに依存している。14年10月の運用見直しでは、内外株式や外国債券の基本的な資産構成割合を全体の6割強に引き上げた。国内株は年金特別会計も含めた積立金全体の約22%に相当する。

高橋則宏GPIF理事長
高橋則宏GPIF理事長
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  昨年度はパッシブ運用が8割強を占め、アクティブ運用は18%どまりだが、運用指標に対する超過収益率は0.92%ポイントと6年ぶりの高水準を記録した。3日にGPIFが公表予定の16年10-12月期の収益額は四半期ベースで過去最大の10兆円規模に達したと、1日付の日本経済新聞朝刊が報じた。

3つの企業群

  GPIFは日本株のアクティブ運用でどのような企業に投資しているのか。昨年3月末時点で保有していた2037銘柄をTOPIXやJPX日経400、MSCIジャパンなど主要運用指標における構成比と比較すると、3つの企業群が浮かび上がる。

  まず、GPIFが保有する日本株の総額を主な運用指標の構成比に当てはめ、100%パッシブで運用した場合の保有額を算出。ブルームバーグの試算によると、実際の保有額との比較で理論値を上回る幅が大きい上位30銘柄はトヨタ自動車NTTホンダなど日本を代表する大企業が並ぶ。

  日本株の保有総額に占める割合を主な運用指標における構成比と比較する方法では、両者の違いが著しい30社にインタネット広告関連のセプテーニ・ホールディングスや歯科製品のナカニシイリソ電子工業などが含まれる。

  GPIFの保有銘柄のうち、主な運用指標に採用されていない小型株102銘柄を見ると、ソフトバンクグループでインタネット専業のメディア事業を担うアイティメディアや建設機械メーカーの技研製作所、製造業への人材派遣業を手掛けるUTグループなどが確認できる。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は、「GPIFの日本株はパッシブ運用が中心だ」と指摘。アクティブ運用で超過収益を狙っても、複数の委託先が似たような企業に集中してしまうと、うまくいかない恐れがあると言う。特徴ある投資戦略を取る委託先を選べば、高い成長力を秘める小型株を追い求めることにもなるとも話した。

  実際、GPIFの保有銘柄で主な運用指標に含まれない小型株の収益率は同期間に約16%と、TOPIXだけでなく、東証マザーズ指数の3.8%をも上回った。生体認証機器メーカーのディー・ディー・エスや自動車部品のエイチワン、耐震基礎工事などを手掛ける日特建設は株価が2倍超に上昇。ただ、こうした小型株は1社平均の時価総額が450億円弱しかなく、合計してもアクティブ運用の1%にも満たないため、収益への貢献度は限定的だ。

  GPIFは個別銘柄の選定はできないが、委託先を戦略や成績で入れ替えている。国内株のアクティブ運用は野村アセットマネジメントやゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど17ファンドに委託。収益力を測る財務指標や株価変動率などを基に構成した独自の指数で、中長期的に超過収益の効率的な獲得やリスク抑制を目指す「スマートベータ」戦略への資金配分を約3年前から増やす、など分散を進めている。

  ブルームバーグの試算では、国内株のアクティブ運用のうち、スマートベータ型は昨年3月末時点で半分超を占めた。3分の1余りはTOPIXを対象としており、約5分の1は少数の優良企業に着目した戦略だった。

  GPIFが日本株を含むリスク性資産の構成比を大幅に高める運用見直しに踏み切ってから、まだ2年半足らず。年金運用界の「クジラ」には、運用対象の分散や手法の高度化だけでなく、リスク管理の強化、専門家の採用と組織作りなど課題が山積している。

  アムンディ・ジャパンの吉野晶雄チーフエコノミストは、「GPIFの運用能力に評価を下すのは時期尚早で、性急に成果を得られるものではない」と指摘。年金基金の運用なので、「長期的な視点を持つ必要がある」と語った。

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