英国から金融職流出、最初は小人数-大きな数字は銀行の「脅し」作戦

  • 失われる雇用は23万2000人か、それとも4000人か
  • 銀行が影響を誇張、交渉での特別扱い狙いか

英国内の金融関連の職のどれだけが、英国の欧州連合(EU)離脱後に流出するのか-。ロンドン証券取引所のグザビエ・ロレ最高経営責任者(CEO)の23万2000人から、経営コンサルティング会社オリバー・ワイマンの4000人まで、見積もりはさまざまだ。

  大きな差は影響を予測する主体の利害を反映しているようにも見える。明らかになってきた銀行の対応策によると、それぞれが当初動かす人数は数千人ではなく数百人という規模のもようだ。

  本当のことを言えば、ロンドンのシティーとカナリーワーフから何人分の雇用が失われるのかは誰にも分からない。離脱後のロンドンがどうなるのか、同市を本拠とする銀行がEU内の顧客にどんなサービスを提供できるのか、それらは今後の交渉次第だからだ。何も分からない現時点では、最終合意に影響を与えることを望む金融機関幹部やロビイスト、政治家が情報の空白を埋めている。

  欧州法人の本部がロンドンにある銀行のトップらは最も口数が多い部類に入る。ロンドンからEU加盟国内に金融商品を販売することを可能にする「パスポート」がなくなれば一番困るのは彼らだからだ。

  「追い詰められた犬が吠えかかってくるようなもので、雑音にすぎない」と金融業界人材あっせん会社ケネディ・グループのジェーソン・ケネディCEOは話す。銀行にとって「最良の合意を引き出せるように政府に圧力をかけているだけだ」と指摘した。

  JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは国民投票でEU離脱が決まる前に、離脱なら最大4000人の異動が必要になるかもしれないと語っていた。今年1月には、それより多くなるか少なくなるかは離脱交渉の行方次第だと述べた。事情に詳しい関係者によると、ダイモンCEOは同月にスイスのダボスでメイ英首相と会った際、英国を本拠とした企業がEU単一市場へのアクセスを現状通り維持できる長い移行期間をEUとの交渉で確保することが必要だと、強く働き掛けていた。

  HSBCホールディングスのスチュアート・ガリバーCEOも1年余り前、ロンドンを拠点とする投資銀行部門の行員5000人のうち1000人をパリに異動させる計画を話すなど、同様の強硬姿勢を打ち出している。それ以来、同CEOはこの主張を何度となく繰り返しているが、先週語ったところでは対象となる行員に声を掛けたことはまだない。

  ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済学助教授、トーマス・サンプソン氏は「企業ロビイストにはそれぞれ動機がある。現段階で悪影響を大きく言えば言うほど、自分たちのセクターを特別扱いをしてもらえる可能性が高くなる」と解説。流出する可能性がある雇用として口にされる「数字の多くはどれだけ厳密に分析されたものか分からない」と述べた。

  匿名を条件に語ったある銀行幹部は、業界からの発言のあれこれは雇用を人質にして政府を脅し、自分たちが利益を得ようとする恥ずべきものだと苦言を呈した上で、HSBCなどがそれほど多くの人材を動かすとは思えないとの見方を示した。

原題:Brexit Exodus Starts With a Trickle as Some Say Banks Bluffing(抜粋)

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