トランプ米大統領は2月28日夜の議会演説で、就任当初からの対決的な姿勢を脱ぎ捨て、選挙戦中の公約を穏やかに語った。ただ、政策を実行するための詳細にはほとんど踏み込まなかった。

  初の議会演説で大統領は医療保険改革法(オバマケア)の撤廃・差し替えや1兆ドル(約114兆円)のインフラ支出、移民制限、防衛力増強について説明。主流派の支持獲得を狙い、政治的に意見の分かれる議題に愛国心と楽観論をちりばめた。穏やかで冷静な演説ぶりを政治評論家らはすぐさま評価した。

  しかし行政府の長として大統領は方向を示さなければならない。その点では演説は多くの有権者、議員、投資家の期待に照らして不合格だった。大統領が優先する法の成立をはばんでいる内紛と混乱の終息にはつながらない見込みだ。

  共和党議員らは欠けている詳細は議会が埋めればよいとの考えを示唆。下院安全保障委員会委員長のマイケル・マコール議員(共和、テキサス)は、大統領はビジョンを示したとし、政策実現への空白部分を埋めるのは議会の仕事だと語った。トランプ氏は「自分がCEO(最高経営責任者)であり、大胆な措置を素早く取る意思があることをわずかな期間の中で示した」とし、大統領令の文言には適切でないものもあるかもしれないが、大統領は「行動派で米国を変えることを望んでいる」と評価した。

  金融市場は反応薄で、米国株先物とドルは演説中に伸び悩んだ。SEIインベストメンツの運用者ショーン・シムコ氏は「株式市場を含め、全ての市場が税制改革とその企業と個人のバランスシートへの影響について詳細を知りたがるだろう。投資家が不透明感に耐えられなくなるのは時間の問題だ」と論評した。

  プルデンシャル・ファイナンシャルの市場ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は電子メールで、演説での「自信に満ちた調子が投資家に大統領への信頼を保つ口実を、今のところは与えるかもしれない」としながらも、「投資家は明瞭さを必要としている」と指摘した。

  トム・デービス元下院議員(共和、バージニア)は、無党派の有権者にとっては「鼓舞されるような」演説だったとコメントした。

リアリティー番組

  NBCニュースとウォールストリート・ジャーナルの世論調査よれば、トランプ大統領は就任時に不支持が支持を上回っていた歴代初の大統領。演説では合意の難しい議題について「さまつな争い」に取り合わずに超党派の交渉を率いるリーダーとして自身を描いて見せた。しかし就任後数週間のエピソードにはこれとは一致しないトランプ氏の姿が鮮明だ。快く思わない報道についてメディアと言い争ったり、出演していた人気番組でのスター役を引き継いだアーノルド・シュワルツェネッガー氏にけんかを売ったりして話題を集めた。

  それでも、28日の演説では「リアリティショーのスター、ドナルド・トランプの肥大した自我」が影を潜めたと、バージニア大学で大統領の歴史を研究しているバーバラ・ペリー氏は評価した。

  落ち着いた大統領らしいスタンスでの演説を受けて、支持率は当面上がるかもしれない。しかし、歴代大統領が既に政策実現に取り組んでいた任期中のこの段階で、トランプ大統領はそのための政治基盤の確立にまだ取り組んでいることが演説で浮き彫りになったとも言える。

原題:Trump’s Softer Tone Masks Hard Road Ahead for Agenda in Congress(抜粋)

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