トランプ大統領は2月28日夜、上下両院合同本会議で初の演説を行い、国民に争いをやめ、国の骨格再建で自分に力を貸してほしいと訴えた。大統領は政策の優先課題を明確にし、発足直後に混乱した政権の新たな船出にすべく演説に臨んだ。

  演説では新たな提案はほとんど行われなかった。医療保険制度改革法(オバマケア)の代替、中間層減税を含む税制改革、1兆ドル(約110兆円)のインフラ投資、国防支出の大幅増加といった大統領の計画の財源についても言及しなかった。

初の議会演説するトランプ大統領
初の議会演説するトランプ大統領
Photographer: Jim Lo Scalzo - Pool/Getty Images

  大統領は演説の冒頭、「現在、われわれが目にしているのは米国の理念再生だ」と発言。「同盟国は米国が再び指導力を発揮する用意があると知るだろう。敵も味方も含め世界の全ての国が米国は強く、誇り高く、自由だと気付くだろう」と語った。

  トランプ大統領は上下両院議員に対して、自身の政策の早急な法制化に取り組むよう訴えた。1時間1分に及んだ演説はまず、過激派組織「イスラム国」の掃討などの国防問題や移民法執行の強化などに言及。ロシアや財政赤字、銀行、金融規制、大学教育の問題には触れなかった。

懐疑的な国民を説得

  共和党内でさえもトランプ大統領の政策への反発が広がる中、大統領はこの日の演説で、自身の政策に懐疑的な国民を説得する必要があった。就任後これまでの6週間に、米株は過去最高値を更新。しかし頻発する抗議デモや、入国禁止令をめぐる法廷闘争、ツイッターを通じての政策発表への批判など多くの問題も抱えている。

  トランプ大統領は「私は結束と力というメッセージを届けるため、この場に来た。今後、米国は国民の恐れで重荷を背負わされることはない。国民の願望によって力を与えられるだろう」と述べた。

  大統領は幾つもの輝かしい約束を表明。「死にかけている業界は力強く息を吹き返し、崩壊しつつあるインフラは造り替えられ新しい道路や橋、トンネル、空港、鉄道が米国の美しい国土を覆うだろう」などと語り「数百万の雇用を取り戻す」と言明した。

  米国市場は反応薄。トランプ大統領の議会演説開始でS&P500種指数先物はいったん2月28日終値に比べ0.3%高となったものの、その後伸び悩んだ。

  ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニアグローバル株式ストラテジスト、スコット・レン氏は電話インタビューで、「トランプ氏は非常に多くの問題について語り、ほとんど全てについて言及したが、どれも細部には触れなかった」と指摘。「市場はこれまで辛抱強く、楽観的だった。今後も少なくとも当面はこうした状態が続くだろう。われわれはまだ細部に踏み込んでいない」と説明した。

  大統領は、就任後にフォード・モーター、フィアット・クライスラー・オートモービルズ、ゼネラル・モーターズ、スプリントソフトバンク、ロッキード・マーチン、インテル、ウォルマート・ストアーズや他の多くの企業が巨額の投資と多数の米国人の雇用を表明したと訴えた。

  「移民法を順守させることで、賃金を上昇させ失業者を支援し数十億ドルを節約し、米国のコミュニティーを誰にとってもより安全にできる」と論じた。この日の演説で示した数少ない新政策の一つとして、不法移民による犯罪の被害者を支援する部署を国土安全保障省内に設置することを命じたと明らかにした。

  移民法違反の取り締まり強化やイスラム圏諸国からの入国禁止令など就任後最初の政策の幾つかは反発や議論を呼んだ。大統領は議会演説で、「視野の狭い考え方」や「ささいな争いを終わらせる時期だ」と国民に呼び掛けた。

歴史的な税制改革

  大統領は「経済チームが歴史的な税制改革を策定しており、それにより米企業がどこでもだれとでも競争し、繁栄できるよう企業への税率を引き下げるだろう」と述べたが、国境税調整には触れなかった。同大統領はまた、「同時にわれわれは中間所得層への税負担の巨額の軽減措置を供与する」と語った。

  共和党が提案している国境調整税案は、現行の法人税に代わり、輸入品と国内販売に20%課税し、輸出品への税は免除するという内容。同案をめぐり米産業界の立場は二分している。

  トランプ大統領は議会に対し、選挙戦の主要公約だったオバマケアの廃止と代替を呼び掛けた。「民主、共和両党はこの自壊しつつあるオバマケアの大災害から国民を救うためにわれわれと取り組むべきだ」と語った。

1兆ドルのインフラ投資

  トランプ大統領は米国内の道路や橋、港湾、空港などの公共事業に最大1兆ドルの支出を提案しており、大統領顧問らはこのプログラムが民間セクターからの資金調達に頼ることになろうと示唆した。

  大統領はこの日の議会演説であらためてインフラ投資を公約したものの、詳細は明らかにせず、「国家の再建に乗り出すためには、米国のインフラへの1兆ドル投資を可能にする法案の承認を議会に要請することになるだろう。政府と民間の双方の資本で賄う同プロジェクトは数百万の新規雇用を創出する」と述べるにとどまった。

原題:Trump Speech Revives Campaign Themes But Details Remain Scarce(抜粋)
Trump Speech Revives Campaign Themes But Details Remain Scarce

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