トランプ米大統領が上下両院合同本会議で28日夜行う初の演説は、記憶にある限りで最も期待が大きいイベントかもしれない。その理由は、トランプ氏に説得力があるからではない。むしろ、大統領としての同氏の実体について、まだよく分からないためだ。

  オバマ前米大統領やジョージ・W・ブッシュ、ロナルド・レーガン両元米大統領にとって就任後初の2月の議会演説は、はっきりしていた政策枠組みの定義をより明確にする機会となった。これに対し、トランプ氏からは政権を運営している感じが伝わっておらず、大統領選を特徴付けた侮辱的言動や言葉遣いを好んで使っている。

  医療から税制、予算、中国、北大西洋条約機構(NATO)、外国への干渉など、大統領就任から5週間でトランプ氏は透明性よりも混乱を作り出した。それが認識不足を示すにしろ、関心の欠如を反映するにしろ、28日はリセットする機会になる。

  予算を提示するわけではないため、詳細に触れないのは妥当だろうが、それでもトランプ氏は大まかに優先事項や希望事項を明らかにすることはできる。議会の多くの共和党指導者らが期待するように、大規模インフラ計画について発表を来年まで遅らせる方針だろうか。選挙公約はしたものの、社会保障やメディケア(高齢者向け医療保険制度)などの給付金プログラムに手を付けずに、どのように支出を削減するつもりだろうか。

  オバマケア(医療保険改革法)についても、共和党議員らが完全撤廃の公約を果たすのに苦戦する中で、トランプ氏はもっと安くて優れた制度を導入すると誓っている。実現困難にみえる綱渡りをどう行うのか、説明しなければならない。

  税制では「国境調整税」についての考え方を聞きたいものだ。輸入業者よりも輸出業者を優先させる同税の生命線は政治が握っている。また同氏は最低でも、2001年当時のブッシュ大統領の例に倣い、税率をどこまで下げたいか宣言することはできる。

  トランプ大統領に選挙公約をコストフリーで実現できるふりをするのはやめ、費用をどう捻出するのかの説明を始めてほしいと要求するのは恐らく難しいだろう。同氏が軍事費の大幅拡大を支持するのは確実だろうが、国防総省における希望リストを正当化する戦略は示すだろうか。

  トランプ氏は前任者2人の最初の議会演説を参考にするのが賢明かもしれない。両者ともに、政策上の優先事項を明確にしていた。オバマ氏はクリーンエネルギー投資と教育、国民皆保険制度に触れ、ブッシュ氏は減税と選択的な教育イニシアチブを表明。こうすることで、両者とも国家安全保障が最優先ではないと示唆した。

  ブッシュ政権は減税の大部分を実現したが、2兆ドル(現在の為替レートで約224兆円)の国家債務を10年で削減する試みは失敗に終わり、実際はその7倍に膨らんだ。もちろん、01年2月時点で、その7カ月後に同時多発テロが起きると予想することは不可能だった。オバマ氏が演説で掲げた内容はその後のヘルスケアや国内課題に対する行動に反映された。8000億ドルの刺激策は米経済が08年の金融危機から回復するのを助けたほか、政治腐敗もおおむねなく、数百万人の雇用を創出した。

  ホワイトハウスは28日の議会演説は、暗い論調だった就任演説よりも明るいものになると説明している。 それは歓迎すべきだろう。トランプ氏は真実をごまかすことさえ、やめるかもしれない。就任後の同じ期間で比べると、本人は否定するだろうが、トランプ氏はこれまでのどの米大統領と比べても功績が少ない。オバマ氏は就任1カ月で法案面で実績があったほか、レーガン、ブッシュ両元大統領の政策綱領も前進していた。

  28日の夜に向け、もう一つのはかない希望もある。自己陶酔型でユーモアのかけらが見られないトランプ氏が明るい側面をちらりとでも見せてくれるかということだ。(アルバート・R・ハント)

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:Trump’s Chance to Tell Us What He Really Wants: Albert R. Hunt(抜粋)

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