14万社超が後継者不足に悩む日本のオーナー企業。高齢化による世代交代が業界の追い風となる合併・買収(M&A)仲介のストライクは、インターネットの活用による「思いもよらない」マッチングを武器に、業界トップの成約組数を狙う。

  業界トップである日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズに続いて昨年6月に上場した同社の荒井邦彦社長はブルームバーグのインタビューで、「案件数で1番になる目標を掲げている。トップも成長していることから、400件ぐらいをやるつもりでないと追いつかない」と今後の経営目標を語る。達成時期は明示しなかった。2017年8月期の成約組数は前期よりも18組多い66組を見込んでおり、第1四半期の実績は17組と計画に向けて順調な滑り出しとなった。
 
  帝国データバンクの調査によると、全国のオーナー企業のうちオーナーが創業者の企業は20万1926社。65歳以上の高齢社長の企業の過半数で後継者がいないなど、全体では約7割が後継者問題を抱えている。ストライクの主戦場は成約組数の約6割を占めるそうした事業承継型のM&A仲介で、製造業や建設、医療、運送など幅広い業種にまたがっている。

荒井邦彦社長
荒井邦彦社長
Source: Strike Co.

  営業力に強みがある同業他社が多い中、自らが公認会計士で営業経験のない荒井社長は、M&A市場におけるネットの活用に早くから商機を見い出した。設立2年後の1999年には、早くもM&Aのマッチングに日本で初めてインターネットを導入。規模で業界トップに劣る同社が意欲的な目標を掲げられるのもネットを通じての強みが差別化として機能する可能性があるためで、「創業時の営業力の弱さが逆に良い方向に向かっている」と、荒井社長は振り返る。

既成概念に捉われないマッチング

  同社がマッチングのために企業の買い手を探す手段は、データベースの活用や独自の候補リスト作成、ネット経由--の3つ。このうちネットを活用する利点は、「人の考えを介在しないこと。仲介業者の知恵の偏りによってマッチングが制約されない」と荒井社長。「北海道の温泉旅館をシンガポールの個人投資家が買収したり、熱帯魚ショップを会計ソフト会社が買収したりと、ネット経由のマッチングでは思いもよらない相手が見つかることがある」。このうち会計ソフト会社のケースでは、社長が熱帯魚好きでショップ経営を望んでいたことが成立につながったという。

  ネット経由のマッチング比率は現在3割まで上昇してきたが、将来的には5割まで引き上げる考え。ネット活用でマッチングがスピーディーになれば、コンサルタントの生産性向上につながり、規模の大きな案件でなくても利益を確保することが可能になる。前期平均1.7組だったコンサルタント1人当たりの成約組数を4組に引き上げるのが目標で、「競合他社に比べて最大4倍を超える生産性の高さ」を目指すと社長は言う。大型案件に頼らない収益構造を築くことで、中小規模のM&Aというボリュームゾーンで勝負することができるという目論見だ。

課題はコンサルタントの増員・育成

  成約件数で400件を目指すという方針の中、1人当たり平均成約組数を4件と仮定すると、コンサルタントは100人が一つの目安と社長は試算する。一方、同社は17年8月期にコンサルタント数を11人増やし、39人とする計画。これは競合する日本M&Aセンターの17年3月期第3四半期末時点の205人に比べ約5分の1の水準だ。

  エース経済研究所の岸和夫アナリストは、成約組数を伸ばすには「競合する2社にコンサルタント数で追いつかないといけない。課題は優秀な人材の獲得に尽きる」と指摘する。「ネットを活用したマッチングシステムを採用しても、最終的にはヒューマンタッチが欠かせない」と、成長に向けて人員拡充の重要性を訴える。

  ストライクは17年8月期の売上高を前期比16%増の23億2600万円、経常利益を同4.1%増の8億2200万円を計画。荒井社長は同計画は「かなり堅めの数字」と説明する。来期以降の中期的な売上成長についても「2割はやらなければならない数字。そうしなければ追いつかない」と話す。その半面、「コンサルタントが一人前になるのには3年かかる。最近入社した社員も多いため生産性は上がりにくいが、上場で調達した資金を人材投資へ振り向けていく」と、荒井社長は先行投資で成長への基礎を固める必要性も示した。

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