2014年12月のある月曜日の朝、ニュージャージー州にある民家の外で米国土安全保障省(DHS)やニュージャージ州財務当局、地元警察など当局の調査員が乗った十数台の車両が待機していた。合図と同時に調査員がこの民家に踏み込む。「ビッグM・A・C(マック)」作戦の決行だ。

  民家から押収されたのは有名化粧品ブランド「M・A・C(マック)」のラベルが貼られた偽物の化粧品約2000点と発送用の箱やラベル、携帯電話、ノート型パソコンなど。捜査員が地下室の天井タイルをはがすと輪ゴムに巻かれた札束2万2000ドル(約248万円)が見つかった。

  M・A・Cや「クリニーク」といった化粧品ブランドを所有する米エスティ・ローダーは偽造品防止策に力を入れており、2003年にグローバル・セキュリティ・チームを発足させ、世界で42人の専門調査員を抱える。調査員はeベイで試し買いし、偽物が見つかった場合の訴訟に備えて証拠を集める。地元当局や各国政府機関とも協力を深めている。

  経済協力開発機構(OECD)の報告によると、偽造香水・化粧品の押収量は2011年から13年で25%増大し、年間4610億ドル規模の海賊版・偽造品市場でも一段と拡大している。全米知的財産権調整センター(NIPRCC)はこうした偽物の化粧品による被害について統計を取り始めた。偽物化粧品が健康に及ぼすリスクは甚大だ。製造場所の多くは不衛生で、偽造品には塗料用シンナーや水銀、発がん性物質や危険水準のバクテリアが含まれているケースもある。

  それでも偽ブランド化粧品販売の勢いは止まらない。2016年に押収された偽エスティ・ローダー商品は1500点、このうちM・A・Cが大半を占めた。全体では280万点を超える偽ブランド化粧品が押収された。

  空港や港では米税関国境警備局(CBP)の調査員が検査しているものの限界がある。DHSが昨年押収した偽造品の83%は製造元が中国本土あるいは香港だった。

  高級化粧品ブランドの多くはホログラムや透かし、無線自動識別装置(RFID)やチップなどを使った偽物防止に努めている。アライド・マーケット・リサーチの調査によると、化粧品や医薬品の偽造防止関連の市場は2014年に357億ドルに達した。

 

原題:Code Rouge: Cracking the Case of the Counterfeit Makeup (抜粋)

  

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