政府と経済界が一体となり、消費喚起へ一矢を放つ「プレミアムフライデー」が24日にスタート。仕事を早々に切り上げた会社員を取り込もうと、賛同企業はあの手この手を繰り出している。日差しの残るアフター3は足湯にでもつかるか、それともビール片手にお座敷列車に飛び乗るか。

  百貨店では、J.フロント リテイリング傘下の大丸・松坂屋が旅行サイトの「じゃらんnet」とタイアップし、午後3時から足湯のイベントや抽選会を実施。髙島屋は、24ー26日に帰宅派の男性客を狙うシュークリームの特別販売のほか、茶会や発酵食品の体験セミナーなどを開く。髙島屋広報担当の花井宏演氏は、「新しい時間が生まれることで新しいことに取り組むきっかけとなり、将来的に消費喚起につながってほしい」と話している。

プレミアムフライデーロゴ
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OZMA Inc.

  旅行業界は、土日にかけた小旅行需要を盛り上げようとツアーやイベントを企画。JR東日本はサントリーと連携、24日午後3時58分に東京駅を出発、横須賀駅折り返しの特別お座敷列車を運行し、4時間弱の車中でビールの新商品を堪能する。エイチ・アイ・エスは金曜日出発の沖縄、台湾行きのツアーを設定し、宮崎県は特産品販売や旅行者の増加を図ろうと、東京・大手町で宮崎牛の紹介イベントを開く。

  ウィズダムツリー・インベストメンツ日本法人のイェスパー・コール最高経営責任者(CEO)は、「マクロ経済へのインパクトはとてもポジティブだ。生産性の向上にもつながる」と指摘。今後はレジャー関連セクターが良くなると予想したほか、「経済が厳しい時、サービスセクターが問題となるが、短時間勤務にシフトすることは功を奏する」との見方を示した。

狙うは消費喚起、試算で年間635億円の押し上げ効果

  プレミアムフライデーは毎月末の金曜日に仕事を早めに切り上げ、個人消費の拡大とともに長時間労働を是正、働き方改革につなげることを狙ったものだ。主導する経済産業省では、政策の根っこには消費喚起があり、豊かさや満足感を感じる時間の使い方が消費につながることに期待感を示す。国会もプレミアムフライデーに配慮し、24日に想定していた2017年度予算案の衆院での採決を来週に先送りする。

プレミアムフライデーに何をするか
プレミアムフライデーに何をするか
Created by Bloomberg

  カルチュア・コンビニエンス・クラブが勤労者1603人を対象にした調査結果によると、プレミアムフライデーでやりたいことの1位は「家でゆっくり過ごす」で、2位は「買い物に行く」だった。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストらは、消費押し上げ効果を最大で年間635億円程度と試算。1週間のうち、元々金曜日の平均消費額は最も多く、制度としての定着や中小企業への広がりが確認できれば、恩恵を受ける対象者は増えると予想する。

  株式市場では、プレミアムフライデーによる収益押し上げ効果を期待する動きが出ている。今週(20ー23日)の日経平均株価採用銘柄のパフォーマンスをみると、上昇率上位に並んだJフロントや髙島屋、三越伊勢丹ホールディングスの百貨店銘柄が4%以上上げ、同期間の指数上昇率0.7%をアウトパフォームした。

時間つぶしの需要も発生か、ソフバンクは4月から1万円支給

  SBI証券の藤本誠之シニアマーケットアナリストは、飲食店やサービス業に好影響が出ると分析すると同時に、「午後3時に帰っても行くところがない人たちの時間をつぶす場所として需要が高まる可能性がある」とし、東京都競馬オリエンタルランド、カラオケや会員制複合カフェも展開するAOKIホールディングスなどを関連銘柄に挙げた。

2月20-23日の日経平均株価銘柄のパフォーマンス
2月20-23日の日経平均株価銘柄のパフォーマンス
Bloomberg

  取り組み啓発のために作られたロゴマークの申請企業・団体件数は3246件(23日現在)。ソフトバンクは月末金曜日の午後3時退社を奨励、午後5時45分の定時まで働いたと見なすほか、4月からは正社員に月額1万円を支給する。第一生命保険は、社員主催のマラソンイベントを開催していく意向だ。社員300人近くを抱える総合会計事務所のAGSコンサルティングの廣渡嘉秀社長は、「時短は会社として損失が大きい」としつつ、「人材が全て。働き方を改革をすると言った方が目立ち、若い優秀な人はそういう会社に来てくれる」と、プレミアムフライデーに賛同姿勢だ。

  一方、経済効果や働き方改革への影響については、専門家の間でも懐疑的な見方がある。三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、今回参加できる人は「一握り。公務員と経団連に近い景気の良い企業の一部は参加するが、周囲は様子見」と言う。SMBC日興証の宮前氏も、恩恵を受けるのは全就業者のうち最大でも6.5%程度で、早帰りや休暇所得が可能な人はさらに限定され、消費押し上げ効果は期待外れに終わる可能性にも言及した。

アンケートで15%が反対、主婦は夫の留守を切望

  アサヒグループホールディングスの調査(対象3250人)では、プレミアムフライデーに4割近くが「賛成」と回答、「反対」も15%あった。就業時間の短縮で月曜日以降の仕事が増えるとの懸念に加え、派遣社員やアルバイトには収入源につながる可能性があり、非正規雇用者を軽視する制度との厳しい批判もあった。主婦の間からは、夫の早期帰宅で自分の時間が減り、迷惑と不満の声も上がっている。

プレミアムフライデーに関する賛否
プレミアムフライデーに関する賛否
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  東京都の会社員、長谷川貴博さん(37)は街頭インタビューで、プレミアムフライデーを「知らなかった。良いアイデアと思うが、誰も知らないのではないか」と語った。

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