米原子力事業で巨額の減損損失を計上する東芝は、主力の半導体製品であるメモリ事業の売却により最低でも1兆円を調達する方針であることが分かった。売却は来期(2018年3月期)中となる見通し。債務超過状態にある同社は、売却に一定の時間をかけ資金確保を優先する。

  関係者が匿名を条件にブルームバーグの取材に答えた。東芝に対する信用不安を打ち消すため、資金調達を優先し、事業の支配権にはこだわらない考え。国内の工場や雇用を維持した上で、国内外の複数の会社やファンドに売却する方針だ。メモリ事業の企業価値は最大2兆円程度に上るという。

メモリ事業売却で1兆円規模の資金調達を迫られる東芝
メモリ事業売却で1兆円規模の資金調達を迫られる東芝
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  東芝は米原子力事業での減損の穴埋めのため、メモリ事業の売却方針を決めていた。当初、売却は20%未満にとどめる方針だったが、減損額が7000億円超の巨額に上る見通しとなり、より多くの株式売却を迫られている。各国での原発規制強化に伴うコスト増加懸念などもある中、来期以降の自己資本の確保を重視する。

  「本来なら手元に残しておきたい超優良事業。一番、利益率が高い事業を売らなければならないところに東芝の苦境が表れている」とエース経済研究所の安田秀樹アナリストは指摘。ただ、仮にメモリ事業を全て売却しても社会インフラ事業などで1000億円程度の営業利益は稼げるとし、「よく言えば安定した、悪く言えば成長性のない企業になる」と述べた。

医療機器子会社売却

  メモリ事業は、スマートフォン向けの記憶媒体などを生産する同社の大きな収益源。綱川智社長は14日の記者会見で、同事業のすべての株式を売却する可能性もあると語っている。東芝は昨年6月、不正会計問題で減少した資本を回復するため、医療機器子会社の東芝メディカルシステムズを6655億円でキヤノンに売却している。また21日には、東芝医用ファイナンス株を約31億円でキヤノンに売却すると発表した。

  東芝が発表した見通しによると、株主資本はすでに債務超過に陥っており、16年12月末で1912億円、今期末で1500億円のマイナスとなる。東証の基準では1部上場企業が年度末に債務超過になると2部に指定替えとなる。東芝の広報担当者はメモリ事業の売却の詳細について回答しないと答えた。

   取引金融機関は、東芝を支援する方針を示している。メインバンクの一つ、三井住友銀行の国部毅頭取は16日の会見で「経営改善に向けた具体的な対策を伺ったうえで、メインバンクとして可能な限りサポートをしていく」と述べた。またメモリ事業の価値を考慮すれば「実態的な株主資本はプラスが維持される」という認識を示した。

  21日の東芝の株価は一時、前日比3.4%高の192.7円まで買われた。ただ午後に下落し、終値は同1.4%安の183.7円となった。

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