米国での不動産運用事業への参入を決めた三井物産。金融事業部の福田英之アセットマネジメント事業室長は「日本の投資家にとってこれまでもオルタナティブ投資はキーワードの一つだったが、加速したのは昨年の日本銀行によるマイナス金利の導入以降。資産運用難から投資ニーズは着実に増えている」と指摘する。国内の機関投資家に対して幅広い米国の不動産ファンドを販売していく考えだ。

  三井物産は20日、米不動産運用会社CIMグループ(ロサンゼルス)の株式2割を3月末までに取得すると発表した。4月以降にCIMが運用するファンドにも出資し、合計で4億5000万-5億5000万ドル(約510億-約620億円)を投じる。これまで国内を中心に展開してきた不動産運用事業において「主戦場の米国市場に参入する」と福田室長は話した。運用資産の規模拡大を通じた収益力強化を目指す。

  CIMの運用資産額は2016年9月末時点で192億ドル。主な投資先はアカデミー賞授賞式が行われるドルビーシアターが併設されているショッピングモールのハリウッド&ハイランドセンター(ロサンゼルス)やマンハッタンの超高層マンション、432パーク・アベニュー(ニューヨーク)など。米国の都市部を中心とした住宅やオフィス、ホテル、商業施設、駐車場など幅広い分野を投資対象とするファンドの組成、運用事業を手掛ける。

  三井物産は完全子会社であるジャパンオルタナティブ証券(東京・千代田区)を通じてCIMの運用するファンドを国内の機関投資家に販売する。年金基金や、銀行、生命保険会社などの金融機関から今後数年間で数千億円規模の出資を募る。CIMは欧米の年金基金などから資金を調達しており、三井物産が資本参加することでファンドの販売先を広げる。

  福田室長はブルームバーグに対して「日本の投資家も海外の不動産やインフラ施設を有望な投資対象とみている」と指摘。ヘッジファンドやプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資なども含めたオルタナティブ資産の世界の投資残高は20年にかけて年率8ー10%の伸びが見込まれるという。

  CIMの不動産運用戦略では、一般的に期待リターンが15ー20%程度と高いオポチュニスティック型と、1桁から2桁の間ぐらいのリターンを目指すコア型と呼ばれる2通りのファンドを取り扱っており、投資家の要望に応じた商品を提供していく。

  鉄鉱石や原油・ガス開発事業など資源分野に強みを持つ三井物産は非資源事業の強化が課題。16年4ー12月期決算では総合商社5社の中で非資源分野の純利益が最も低かった。来期からの新中期経営計画において非資源分野で2000億円の純利益を稼ぐことを目標とする方針。不動産運用事業の拡大も非資源分野強化の一環となる。

  三井物産は国内の不動産運用事業では昨年4月に戦略子会社として三井物産アセットマネジメント・ホールディングスを設立した。同社は20年までに2000億-3000億円程度を投資する計画。一方、海外での不動産運用事業は07年にシンガポール、14年にタイでそれぞれ不動産投資信託(REIT)事業に参入したが、小規模にとどまっていた。トランプ米政権の掲げるインフラ投資促進や減税方針については「事業展開にはポジティブな環境」とみている。

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