1年ほど前に報じられた話だ。英紙テレグラフの記者が机の下に小さな黒いボックスがあることに気付いた。「OccupEye」と表示されているその機器は、記者の在席と離席を感知する道具だった。トイレに行く時間まで上司に監視されていると、記者やエディターらは不安になった。全英ジャーナリスト組合は小説「1984年」のような監視について、経営陣に苦情を出した。会社側は不要な暖房や冷房を減らす省エネが目的だと説明したが、説得力はなく、機器は撤去された。

  室温以外のあれこれを感知するセンサーは実際、既にオフィスのあちこちに設置されている。目立たないし、あからさまに監視を意味するような名前も付いていないので「たいていの人はオフィスに足を踏み入れても気付かない」とセンサー会社、エンライテッドの最高経営責任者(CEO)、ジョー・コステロ氏は話す。同社はフォーチュン500企業の15%を含む350社以上の企業にセンサーを設置している。照明やIDカードの中に隠され、会議室の利用状況や従業員の所在、同僚と話をしない時間の長さなどを監視している。

オフィスの最新センサーはあなたがデスクを離れるのも感知している
オフィスの最新センサーはあなたがデスクを離れるのも感知している
Photos: Alamy(1); Getty Images(2)

  センサーを活用する側は、効率が目的だと説明する。空間利用を最適化するためにヒートマップで人の動線を示すセンサーもある。OccupEyeのセンサーは空調システムとつながっている。オフィスデザイン会社のゲンスラーはニューヨークの新オフィススペースにエンライテッドのセンサー1000個を設置。動きや日照、エネルギー使用をモニターし照明レベルを調節する。従業員の行動パターンも学習する。ある部署の従業員が午前10時から業務を開始するならば、それまでは照明は暗い状態に抑えられる。これまでにエネルギーコストが25%節約できたという。設置のための初期投資額は20万ドル程度で、5年で回収できる見込み。

  法律的には、米企業は「サウロンの目」のように従業員を監視できる。ナショナル・ワークライツ・インスティチュートのプレジデント、ルイス・モルトビー氏は「雇用主はトイレ以外の職場のどこでも好きなだけ監視できる」と言う。データに個人名が付されないなら監視を気にしないという従業員もいる。ゲンスラーのデザインストラテジスト、ルーク・ロンデル氏(31)は「気にならない」と述べた。ピュー・リサーチ・センターの昨年の調査では、過半数の勤労者が安全のためならば監視とデータ収集を容認すると答えた。

  ただ、それも程度の問題なのかもしれない。ボストン・コンサルティング・グループは従業員からボランティア100人を募り、マイクと位置センサーを組み込んだバッジを配布した。従業員の動きと会話をモニターするもので、同社はオフィスの設計と従業員間のコミュニケーションの関係を調べるのが目的だとしているが、外部からはジョージ・オーウェルの小説のようだ、企業の横暴ではないかとの批判もある。

原題:New Office Sensors Know When You Leave Your Desk(抜粋)

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