北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアで殺害された事件には不可解な部分が多い。だが今や、金正恩委員長の潜在的な政敵がほぼ皆、命を失ったことだけは明らかだ。

  男性支配の権力世襲が行われる北朝鮮で、仮にエリート層が金正恩委員長(33)の排除に動いた場合、45歳で亡くなった金正男氏が代わりの最高権力者候補となる可能性があった。長年、北朝鮮を離れて暮らした金正男氏は、マカオのカジノをたびたび訪れ、金正恩委員長を批判することもあった。故金正日総書記の次男の金正哲氏(35)は、金正恩委員長による権力掌握の主な脅威とは受け止められていない。

金正男氏と金正恩委員長の写真を映し出す韓国のテレビ画面
金正男氏と金正恩委員長の写真を映し出す韓国のテレビ画面
Bloomberg

  マレーシア警察は15日、金正男氏殺害に関与した疑いで、ベトナムの旅券を保持する女を逮捕。他に関与したとみられる複数の容疑者の行方も追っている。殺害事件を金正恩委員長に結び付ける証拠はまだないが、韓国の国会議員や北朝鮮の体制に詳しい識者は、同委員長が明確な勝者であると見なしている。

  米国防総省で顧問を務め、現在はハワイのダニエル・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究センターで教えるバン・ジャクソン氏は「金正恩氏が暗殺を命じたかと問えば、ほぼ確実にイエスだろう」と分析。「同氏は権謀術数に満ちた宮廷政治の悪夢の日々を過ごしており、北朝鮮では血統が依然として正統支配への最も強力な資格となる。潜在的な力の中枢を取り除くのは冷酷だが抜け目のないやり方だ」と説明した。

  北朝鮮が米国などを攻撃できる核戦力を保持しようと努める中、金正男氏殺害は金正恩体制の安定性に疑問を生じさせる。トランプ米大統領は北朝鮮に「強力」に対処すると表明するとともに、北朝鮮の主要な同盟国である中国に対し、金正恩委員長への圧力を強めるよう求めた。

原題:Kim Jong Un Cements Power in North Korea’s Game of Thrones (1)(抜粋)

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