中国政府の資本流出規制強化が世界の不動産市場を身震いさせている。

  ロンドン最高層のタワーマンションの一室を3カ月前に大騒ぎして買った中国人が今、頭金の送金に苦しんでいる。シリコンバレーでは中国からの物件問い合わせが今年に入り減ったと、不動産仲介業者ケラー・ウィリアムズ・リアルティーが指摘する。そして中国・オーストラリアの2国間に関するコンサルティングを手掛けるベーシス・ポイントによれば、シドニーでは中国人の住宅購入者が減ったことで開発業者が頭を抱えている。

  ケラー・ウィリアムズに勤める米カリフォルニア州クパティーノの不動産業者、ココ・タン氏は、中国からの海外送金がより困難になったことで「全てが様変わりした」と話す。

ロンドンのタワーマンション「ザ・スパイア」の販売促進イベントを訪れた購入見込み客(2016年11月、北京)
ロンドンのタワーマンション「ザ・スパイア」の販売促進イベントを訪れた購入見込み客(2016年11月、北京)
Photographer: Bloomberg

  中国が海外送金に新たな制限を加えてから1カ月もたたない時点で不動産業者や住宅保有者、開発業者から受けた事例報告をみると、新規制はすでに世界不動産市場での未曽有の購入ブームに重しとなっているようだ。中国からの需要がすぐ消えうせるとは誰も見込んでいないが、今回の取り締まり強化は、海外に資金を持たずに資本規制を回避する専門知識にも乏しい住宅一次取得者に購入を思いとどまらせている。

  上海に住む元公務員のチェン氏(66)は、「あまりにもややこしいなら引き下がる」と話す。規制当局の調査対象になるのを避けるため下の名前を伏せて取材に応じた同氏は、メルボルン西部にある240万元(約4000万円)の住宅の購入に向け昨年8月に30万元の頭金を支払ったが、購入をあきらめるかもしれない。今月中にまた、まとまった支払いが同氏を待ち構えている。

  チェン氏を含む多くの中国人を動揺させた規制強化は昨年12月31日、国家外為管理局(SAFE)からの声明で発表された。数時間後には中国人の年間外貨割当額がリセットされるというタイミングだった。SAFEが示した新たな要件の一つは、外貨を購入する国民は年間5万ドルという外貨割当額を海外不動産投資に使わないという誓約書に署名が必要というものだった。違反者は政府の監視対象者リストに載り、外貨入手を3年間禁じられ、資金洗浄捜査の対象になる。

  中国で最も人気が高い不動産ウェブサイトを運営するファン・ホールディングの海外事業部バイスプレジデント、ワン・ニン氏は「顧客の多くが懸念を抱いており、ちゅうちょし始めている」と話す。当局はこれまでも長いこと不動産購入への外貨の使用を禁じてきたが、証拠文書が要件に加えられたことは、政府が本気で取り締まりに乗り出してきたことを示唆している。

  テムズ川が眺望できるロンドンの67階建ての「ザ・スパイア(The Spire)」では分譲住宅が購入価格59万5000ポンド(約8500万円)から売り出されているが、ここでも購入予備軍がこの新規則に不意を突かれた。上海を本拠とするスパイアの開発業者、グリーンランド・ホールディングの広報担当者は1月12日、昨年末までに売買契約を結び頭金を支払ったのは購入者の7割未満で、残りの購入者もここにきて何らかの「問題」に直面していると明かした。この担当者は会社規則を理由に匿名で取材に応じた。

  ベーシス・ポイントのクリストファー・トッド・ジョンソン氏は、中国の政策微調整は象徴的なものにすぎない印象があるが、これは中国人によるオーストラリア不動産購入の「目立った減少」を引き起こす公算が大きいと話す。入手できる最新統計によれば、オーストラリア政府は2015年6月までの1年間に中国から総額240億豪ドル(約2兆1100億円)の不動産投資を承認した。同国では中国が海外からの不動産投資で最も大きな割合を占めていたことになる。

  中国は先月26日、国内企業による資本流出についてもさらなる抑制に動き、本土外での投資計画がある企業に対し、資金の調達先を明示し、支出計画のさらなる詳細情報を示すよう求めた。

  前出の上海に住むチェンさんには、メルボルンの住宅購入から手を引くか、それとも中国の外貨規制違反もやむなしとするかの決断が刻一刻と迫っている。チェンさんは頭金の残りの80万元を2月末に送金することになっている。

  「将来の住宅ローン支払いは賃貸料所得でおそらくカバーできるが、海外にいま送金すべきかどうかというのが差し当たりの問題だ。どうすべきかよくわからない。あえて危険を冒さない方が安全だろう」と話した。

原題:China’s Army of Global Homebuyers Is Suddenly Short on Cash (1)(抄訳)

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