トランプ米大統領が財務長官に起用したスティーブン・ムニューチン氏が13日、上院本会議での指名承認を経て、正式に就任した。これにより、他国の通貨政策への批判を公然と口にするトランプ政権に、各国の財務相は直接のカウンターパートをようやく持つことになった。

  トランプ政権発足後の数週間、大統領やその顧問が唱える内向きの通商政策について、20カ国・地域(G20)の財務相は説明を求めようにも、米財務省トップが不在のまま暗中模索の状態に置かれていた。中国や日本、メキシコ、ドイツなど多額の貿易黒字を計上する国々を名指しした発言で、市場が反応するケースもあった。

スティーブン・ムニューチン氏
スティーブン・ムニューチン氏
Photographer: Kevin Dietsch/Pool via Bloomberg

  為替に関する不規則発言が大目に見られた政権始動直後の非公式の猶予期間は終わりを迎え、今後も口先介入を続けて為替相場の変動を招けば、「通貨の競争的な切り下げを回避する」ことを再確認した昨年9月のG20首脳会議の共同宣言の約束に反するか、通貨戦争を招く恐れがある。

  世界中の市場や政策立案者が固唾(かたず)をのんで見守っているのは、トランプ政権として一段と厳しい態度で臨むと公約してきた中国に対し、その初動がどうなるかだ。大統領選を通じ、就任直後に為替操作国の認定に踏み切るとしていたトランプ氏だが、その後、強硬姿勢を後退させている。ムニューチン氏は、必要ならこうした認定を支持する意向を表明している。

  調査会社ビーコン・ポリシー・アドバイザーズ(ワシントン)のマネジングパートナー、スティーブン・マイロー氏は「対中通商紛争がどのように始まるか正確に予想するのは困難だ」としつつも、4月に公表予定の半期に一度の為替報告書で「少なくとも米財務省が中国を為替操作国に認定すると見込まれる」と語った。

  一方、キャピタル・エコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏(ロンドン在勤)は、大統領顧問の多様な見解を踏まえれば、市場が期待しているような明確な方針をムニューチン財務長官が示すことにはならない可能性もあるとみる。

  ウィリアムズ氏は、通貨ないし通商をめぐりトランプ政権に「統一の政策があるかどうか」不明だと指摘。「通常は財務省が主導すると予想される」が、国家通商会議(NTC)委員長の「ピーター・ナバロ氏のような人々が横やりを入れ、大統領がその助言を受け入れる可能性もある」との見方を示した。

  ムニューチン氏が成果を上げられるかどうかは、巧妙な議会対策に加え、商務長官に起用されたウィルバー・ロス氏や国家経済会議(NEC)のコーン委員長といった政権経済チームの他のメンバーとどのように協力していくかに左右される。

  対外関係では3月17、18両日にドイツのバーデンバーデンで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議でのデビューが、ムニューチン氏にとって世界的な協力に向けた最初の関門となる。

  ドイチェ・バンク・セキュリティーズの為替調査責任者、アラン・ラスキン氏は中国や日本、メキシコ、ドイツなどに言及し、「多額の二国間黒字を抱える国々は為替相場の水準や変動が政治問題化する事態に多く直面する事になるだろう」と語った。

原題:Mnuchin G-20 Debut Clouded as U.S. Unspools World Currency Pact(抜粋)

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE